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ファクター投資理論の実践

ファクター投資理論の実践

20-03-2018 | インタビュー

ファクター投資を実践するにあたり、基本的に投資家はどのような手順を踏めばよいのでしょうか。どのような商品を選ぶべきでしょうか。一般に公開されたインデックスに基づく商品は最適な選択肢と言えるのでしょうか。これらの問題について、ロベコのJoop Huijがご説明します。

  • Joop  Huij
    Joop
    Huij
    Head of Indices

要点

  • ファクター投資の実践で求められる選択は、単純な二者択一ではありません。
  • 市場で提供されている商品は玉石混交です。
  • 公開されたインデックスの透明性には代償が伴います。

ここ数年、主にファクター投資戦略の実践面に関する実証研究を行っていますね。この種の投資アプローチに対する投資家の見方に、最近変化は見られますか。注目すべきトレンドを教えてください。

「この分野においては、ここ数年急速な進歩が見られます。個人的には、ファクター投資に対する最近の考え方には、3つの大きなトレンドがあるとみています。最初に挙げるべきは、ポートフォリオにファクター投資を導入しようと考える投資家は増加する一方、必ずしも伝統的なアクティブ戦略には興味を持っていない点です。インデックスに基づく商品を利用したファクター投資が極めて人気となっています。」

「もう1つの重要なトレンドは、マルチファクター戦略の台頭です。当初、投資家はバリュー低ボラティリティなど、単一のファクターに興味を持ち資産を配分する傾向が見られました。しかし、次第に複数のプレミアムへのエクスポージャーを提供するソリューションを求めるようになってきています。それにより、ある特定のファクターのパフォーマンスが平均を下回ってしまう年にもストレスを緩和することができます。」

「市場で見られる3番目のトレンドは、マルチアセットのファクター投資が伸びている点です。複数の資産クラスでファクター投資を実践したいという要望が次第に高まっています。この動きは、ファクターは様々な市場や資産クラスで、長い歳月をかけて、実証論文により経験的に裏付けられるべきであるという事実にも整合しています。」

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ファクター投資に興味のある投資家は、何から始めればよいのでしょうか。その際考慮すべき点は何でしょうか。

「既に多くの投資家がご存じのことと思いますが、まず認識すべきなのは、ファクター投資の実践は単純な二者択一では終わらないという点です。単にファクター投資を実践するかしないかを決めさえすれば、後は詳細を気にせずに、選択肢の中から最も安価なソリューションを探せばいいというものではありません。ファクター投資の導入を決めた後の選択こそが、投資戦略の成功において極めて重要だということに、多くの投資家は気付き始めていると思います。」

「最初に直面する重要な選択は、どのファクターを戦略的に配分するかという見極めです。これはごく基本的な事柄に思えますが、決して些細な問題ではなく、著名な学者の間でも依然として論争の的となっています。有意なファクターは2つしか存在しないと主張する専門家もいれば、ファクターは6つあるという専門家も、400のファクターが存在するとする専門家もいます。そうした中、投資家が注目すべきなのは、どのファクターがいつ有効なのか、という点です。」

「ロベコでは、この問題について実際に数多くのリサーチを行いました。様々な一般的でないファクターを対象に、その有効性について、より伝統的なファクターいくつかと比較しながら検証しました。リサーチ1の結果、取引コストや税やあらゆる実務上の制限事項を考慮に入れると、実際に機能するファクターは、徹底した学術的実証研究を経たものだけであることが明らかとなりました。」

その他に注目すべき重要事項はありますか。

「投資家が次に決めるべき重要な要素は、戦略的な資産配分ミックスにおける、それぞれのファクターのウェイトです。私は、分散はファクター投資における最重要事項の1つであると確信しています。そして、様々なファクターに広く分散されたファクターミックスを常にお勧めしています。」

「3つ目の重要事項は、ファクタープレミアムを確実かつ効率的に享受できるソリューションを選択することです。それには、ファクター投資導入によりどのようなリスクに晒されることになるかを理解し、必要なリスクとそうでないリスクとを見極めることが肝要となります。そのためには、報われないリスクを特定しそれらを排除するためのツールの開発も非常に重要だと考えています。」

「ファクター投資戦略は全景気サイクルを通じて評価されるべきです」

現在のファクター投資への人気の高まりを見ると、特にパフォーマンスが突然悪化するような時期を迎えた場合など、大きな失望を呼ぶ可能性はありませんか。

「私の認識では、投資家があるファクターに戦略的な資産配分を行う際、たとえば株式に戦略的な資産配分を行う場合と同様に、毎年毎年必ずプラスのリターンを得ることは期待できないと理解したうえで行っていると考えます。ファクター投資戦略は全景気サイクルを通じて評価されるべきです。また、最近は投資家の間で、分散の概念とその有効性への理解は進んでいると考えています。というのも、ここ数年、実際に良好なパフォーマンスをあげたファクターもあれば、そうでなかったファクターもあるからです。」

しかし、足下でのファクター投資への資金流入の大きさを考慮すると、このトレンドが裏目に出る懸念はありませんか。

「これは、イノベーションが進行する段階ではよく見られることです。常に導入初期と言うべき段階があり、ファクター投資も、それを経て現在の大きな人気につながっています。そのため、ますます多くの運用機関がファクター投資の分野に進出し、様々な商品が溢れています。その結果、中には失望する投資家も出てくることは不可避と言えます。」

「と言うのも、市場で提供されている商品の質は玉石混交の状態になっているからです。実際の運用実績が積み上がり、最も質の高い商品が判明するまでには、一定の時間が掛かります。時間が経過すれば淘汰される商品もあると思いますが、これは必ずしも悪いことではありません。実際にはそれよりも懸念すべき面があります。通常『スマートベータ』と称される、一般的なインデックスに基づく商品が溢れていることです。」

「懸念の背景には次のような事情があります。すなわち、投資家にそのようなインデックスに基づく商品に投資した理由を聞くと、概ね2つの答えが返ってきます。1つは『手数料の低さ』であり、これについて反論することは困難です。アセット・オーナーが低い手数料を求めるのは当然です。もう1つの答えは『透明性』で、これも反論が難しいものです。アセット・オーナーとしては、投資の中身を管理したいはずです。」

「しかし、多くの投資家が気付いていないのが、そのようなインデックスの透明性は、自身だけに独占的に提供されるものではないということです。つまり、透明性は公のもので、自己資金運用会社やヘッジファンドを含めた他の投資家も、どのような取引が行われるかを事前に知り、それをオポチュニスティックに利用した取引を行うことができるのです。」

それが、インデックスに基づく投資のパフォーマンスに悪影響を与えるということですね。

「その通りです。これは非常に深刻な懸念材料だと考えています。ロベコでは、既にそのような事態が発生しているのか、そしてそれがインデックス投資にどのような意味を持つのかに関し、大掛かりなリサーチプロジェクトを立ち上げました。その結果を同僚のGeorgy Kyosevとともに論文2にまとめ、2018年初めにフィラデルフィアで開かれた米国金融学会でプレゼンテーションを行いました。」

「我々の結論では、こうしたフロントランニングが行われていることを明確に示す実証的な証拠は存在します。また同時に、公開されたファクター・インデックスには過密化の明確な兆候が見えました。これにより、これらインデックスに基づく商品が安価である理由の一端は説明がつきます。アクティブ運用の運用機関であれば、ファンド規模の拡大に伴う平均パフォーマンスの低下から既存の投資家を保護するため、ファンドの募集を停止して運用資産のキャパシティを管理することが求められます。それに対し、インデックス・プロバイダーにそのような責任は発生しません。それらインデックスに連動する商品を提供する運用会社も同じなのです。」

1 E. van Gelderen and J. Huij, 「学術知識のミューチュアルファンド業界への普及:ミューチュアルファンドにファクター投資戦略を導入することは可能か ‘, 」, ジャーナル・オブ・ポートフォリオ・マネジメント, 2014年. J. Huij and G. Kyosev, 「ファクター・インデックスの銘柄追加と削除に対する株価の反応(Price Response to Factor Index Additions and Deletions)」, 2016年
2J. Huij and G. Kyosev, 「ファクター・インデックスの銘柄追加と削除に対する株価の反応‘
Price Response to Factor Index Additions and Deletions’, 2016.

当記事は、著名な学者へのインタビューをまとめた書籍に掲載された長編インタビューの抜粋です。

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