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クレジット・アウトルック:不完全な情報に基づく不完全な予測

クレジット・アウトルック:不完全な情報に基づく不完全な予測

15-12-2021 | 四半期アウトルック
現在は、歪みを生じさせる要因が数多く作用しているため、シンプルな答えを求めて経済理論を拠り所とするわけにはいきません。
  • Victor  Verberk
    Victor
    Verberk
    CIO Fixed Income and Sustainability
  • Sander  Bus
    Sander
    Bus
    Co-head Credit team
  • James Stuttard
    James
    Stuttard
    Head of Global Macro team and Portfolio Manager

要点

  • 新型コロナウイルスの影響による厳しい冬を経て、季節的な景気回復に期待
  • バリュエーションが小幅に割安となる一方、企業の信用力は堅調
  • 中央銀行はインフレ懸念に対する適切な政策対応に二の足を踏むなど、テクニカルは脆弱

経済アドバイザーにとって、不完全な情報は不完全な予測につながり、経済活動の予想プロセスを複雑にします。特に現在は、そのような状況にあります。歪みを生じさせる要因が数多く作用しているため、シンプルな答えを求めて経済理論を拠り所とするわけにはいきません。企業の価格決定力、景気刺激策、個人消費の傾向に関連するあらゆる証拠を踏まえ、2022年第1四半期には、米欧のファンダメンタルズはクレジット市場を動かす大きな要因にはならないと考えています。 

バリュエーションに注目すると、スプレッドは拡大に転じています。この傾向は欧州のクレジット市場から始まり、米国のクレジット市場ではいくぶん遅れがみられますが、新型コロナウイルスに関しては全世界が同じ立場にあるとの認識が共有された段階で、欧州に追いつくと予想しています。また、ロシア関連の地政学リスク、中国の不動産市場の崩壊が経済成長に及ぼす影響、新興国市場全般のボラティリティなど、市場に十分織り込まれていないと考えられるリスク要因も数多く存在します。リサーチを主軸とする逆張り的な姿勢でこれらのリスクを管理することが、(仮に適切な水準が存在するとして)ベータの水準を適切に見極めることよりも重要になるでしょう。 

何年もの間、アセットオーナーはリスク量を積み増してきましたが、中央銀行の行動やコミュニケーションをはじめとするテクニカル要因によって、一連のリスク回避の動きが誘発されることも想定されます。このため今回の議論においては、テクニカル面の評価が特に重要な意味を持つこととなり、しばらくは慎重な姿勢を維持すべき最大の理由になると考えています。

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ファンダメンタルズ

景気の先行きを評価する上で、「謙虚さ」という言葉が最も適切な用語と言えるでしょう。もっとも、比較的無難な評価もいくつか存在します。最近、経済成長見通しは下方修正されたものの、世界の製造業の成長率は堅調です。消費財に対する需要が、引き続き成長を下支えしています。実際、経済成長の大部分は消費需要によって実現しています。これまでのところ、設備投資と在庫の積み増しは成長にほとんど寄与していません。これは、明るい未来を示唆しているのかもしれません。

企業の業績は概ね堅調であり、利益は増加傾向にあります。投入コストの上昇がテーマとして重みを増していますが、全般に利ざやは持ちこたえており、ほとんどの企業が投入物価格の上昇を価格に転嫁できることは明らかです。その一方で、米国の労働市場は逼迫傾向にあります。欠員の補充は難しく、労働参加率はコロナ前よりも大幅に低下し、早期退職の傾向が強まり、2020年の初頭以降約250万人が失職するなど、全体像はいくぶん不明瞭ですが、重要な点として、労働力不足が顕在化しつつあります。

市場にとって物価動向が大きな懸念材料であることは、言うまでもありません。インフレ率は上昇傾向が続いています。足元の動きは一過性の現象であると中央銀行は強く主張していますが、市場参加者の間では懐疑的な見方が増えています。FRBのコミュニケーションも問題の解決にはつながっていません。パウエル議長は最近、「一過性」という表現の使用を中止するか、定義を変更するべきであるとコメントしていますが、生産的な結果は生じていません。FRBはここ数年間にわたって、意図的に後手に回る姿勢を市場に理解させるよう努めてきましたが、ここ数カ月間、インフレが高水準で推移したことによって、その試みも失敗に終わりました。

また、市場が新型コロナウイルスのオミクロン株の動向について消化を試みるタイミングにおいて、パウエル議長がこのコメントを発したことにも違和感が残ります。中央銀行とその行動がもたらす影響に対して、ロベコが懐疑的な見方をする背景には、このような動きが存在します。

欧州では利上げに関する議論は時期尚早と言えますが、いずれかの段階で「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」が終了する展開については、備える必要があります。もっとも、ECBは、必要性が感じられた場合にPEPPを再び導入する選択肢を残すなど、一定の柔軟性を維持したい意向であるとみられます。PEPP終了の影響を相殺する目的により、「資産買い入れプログラム(APP)」が一時的に拡大される可能性さえあります。別の言い方をすると、ECBによるクレジット資産の買い入れは2022年も何らかの形で続くことになり、リスク資産を採り入れる形でのグローバル・ポートフォリオのリバランスは終了していないことを意味します。

ファンダメンタルズ面では、中国情勢が引き続きロベコの最大の懸念になります。GDPの25%、国内向け融資の40%が不動産関連であるため、中国の不動産セクターに対しては、過度に楽観的な見方は禁物です。また、欧州の銀行に悪影響が及ぶことも考えられます。政策当局においては影響波及の勢いを緩和することは可能かもしれませんが、根本的な不均衡が解消されるまでに何年もかかることがあります。

 結論として、欧米の先進国市場のクレジット投資家にとっては、ファンダメンタルズは問題にならないでしょう。経済成長の推計は困難な作業ですが、FRBが大きな政策判断ミスを犯したり、中国経済の減速ペースが加速したりしない限り、厳しい冬の局面を越えた後には、ファンダメンタルズはクレジット・スプレッドの長期的な変動要因にならない可能性が高いでしょう。インフレの動向や中央銀行の行動及びコミュニケーションがセンチメントを規定し、短期的なリスク・サイクルを左右するかもしれません。ロベコのグローバル・マクロ・チームは、欧州のインフレ率は2021年第4四半期に、米国の消費者物価指数(CPI)は2022年上期に、それぞれピークを迎えると予想しています。その後は来年末までに、政策目標をやや上回る水準に落ち着く見通しです。

足元の投資環境は、これまで以上に不完全な情報と不完全な予測に満ちあふれています。その結果、市場ではボラティリティが発生し、アクティブ・マネージャーにとっては投資機会が生まれることになるでしょう。

図表1 | 市場のサイクル:マーケット・セグメントに対する我々の見解のマッピング

出所: ロベコ、2021年12月

バリュエーション

ロベコが少し前から予想していたように、直近ではバリュエーションの割高感はやや薄らいでいます。しかし、市場には依然として割安感が存在しません。引き続き、リスク・ファクターは十分に織り込まれていないと判断しています。地政学リスク、インフレ懸念、中国の経済成長に対する懸念、エネルギー価格の変動、名目金利の全般的な変動などの要因は、足元のスプレッドが正当化できないことを示唆しています。

バリュエーションに関する結論として、クレジット・スプレッドには引き続き割高感が見受けられます。ここ最近、スプレッドが小幅ながら拡大したことを受けて、銘柄選択の機会が生じる可能性があります。

テクニカル

緩和の兆しが確認されるとはいえ、供給のボトルネックが当面は解消されないことも、十分想定されます。長期的には、新型コロナウイルスとの共存を余儀なくされるかもしれませんが、経済的な影響は次第に弱まるはずです。この問題を「テクニカル」の項で取り上げたのは、インフレに与える恒久的な影響は未知であり、中央銀行の行動に対する不確実性が拡大する可能性があるからです。また、政策判断ミスが生じる可能性や、市場がミスに反応する可能性も高まることになります。

結論として、テクニカルには脆弱な印象が残り、市場価格に十分織り込まれていないリスク・プレミアムも数多く存在しています。最も適切な金融政策の方向性を規定する意思が中央銀行に見受けられないことと相まって、リスク資産からの資金流出につながるおそれがあります。

ポジショニング

ロベコでは2021年は退屈な年か弱気な年になると予想していましたが、結果的に退屈な年となり、ユーロ建て投資適格債の年初来の超過リターンはゼロにとどまっています。もっとも、年末時点において、インフレ上昇懸念を背景に、経済の不確実性は強まっているように思われます。ロベコの立場では、現在アンダーウェイトとしているベータの引き上げを正当化するためには、何かより大きな動きが始まりつつあることを確信する必要があります。

中国を除く一部の新興国市場、金融銘柄、BB格のクレジット、ユーロのスワップ・スプレッド、新型コロナウイルスからの回復に関連する各種ポジションには、投資機会が浮上しつつあります。引き続き、現在のバリュエーションを鑑みて、米国のクレジット対比で欧州のクレジットをオーバーウェイトとしていますが、米国のクレジット市場が下落に転じた場合には、この評価を見直す方針です。

全般に、信用サイクルの現段階においては、何を保有する場合でも、リスクをスプレッドに反映させることが重要になります。

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