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債券アウトルック:トンネル・ビジョン(視野狭窄)

債券アウトルック:トンネル・ビジョン(視野狭窄)

30-09-2021 | インサイト
群集心理的なポジショニングを示す証拠は溢れています。債券市場は注目するテーマを限定するようになったように思われます。政策にフォーカスする作業を怠り、家計のバランスシート分析に際してはコホート・ベースのアプローチを見落としています。
  • James Stuttard
    James
    Stuttard
    Head of Global Macro team and Portfolio Manager
  • Michiel de Bruin
    Michiel
    de Bruin
    Portfolio Manager Global Macro Fixed Income
  • Bob Stoutjesdijk
    Bob
    Stoutjesdijk
    Analyst

要点

  • 債券市場は底堅さを維持しているが、コンセンサスは依然としてショート・ポジション
  • ポジショニングが変わらない中で、ペイン・トレードが引き続き波乱要因に
  • 米国の債務上限問題、冬場のウイルス感染拡大、中国経済の減速が注目される見通し

前回のグローバル債券マクロ・アウトルック「インフレに対する過剰反応」において、パンデミック危機が終盤を迎える中、債券利回りの上昇、イールドカーブのベア・スティープニング、長期的なインフレ上昇、持続的な経済成長という見方が広がっていることに対して、疑問を投げかけました。その後、10年物米国債利回りは25bp低下し(フォワード対比ではそれ以上)、5年/30年のカーブは35bpフラットニングしています。また、昨年末には、「レンジ相場の再来」の中で、セルサイドとバイサイドのコンセンサス予想がこれまで以上に一致していると指摘しました。この3カ月間にベア・スティープニング派に打撃を与えたペイン・トレードの需要が引き続き残存しているとみられるため、このコンセンサス予想がさらに揺らぐ展開も考えられます。

有名な話ですが、心理学者のクリストファー・チャブリス氏(ハーバード大学)とダニエル・シモンズ氏(コーネル大学)は著書「見えないゴリラ(The Invisible Gorilla)」の中で、認知的な情報フィルタリングにおける選択的注意(トンネル・ビジョン(視野狭窄))の役割を示しました。現在の債券市場ではトンネル・ビジョンが広がり、多くの市場参加者は自ら優先するテーマに過度に注目してしまい、他のテーマが優勢になる可能性を考慮していないようです。

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個人的体験に基づく発見が、経済全体に意味を持つとは限らない

一例を挙げると、多くの金融スペシャリストは、自らが上位1%の所得層に属しているにもかかわらず、個人的な消費体験を根拠に経済全体においてインフレが上昇すると予想しています。また、多くの国では、立地条件の良い住宅の価格が10~20%上昇する一方で、賃料の伸びは2~3%にとどまっています。米国では新車の3倍の販売台数を誇る中古車についても、最近3カ月間は価格が下落傾向にあります。中古車価格は、春先において前年比のCPI(消費者物価指数)に対する寄与度が大きいため、重要な指標となっています。市場のプロフェッショナルの個人的体験に基づく発見が、経済全体に意味を持つとは限りません。

2点目に、最近、HSBCのスティーブン・キング氏やモルガンスタンレーのセス・カーペンター氏のような長期志向のエコノミストは、インフレには双方向のリスクが存在すると指摘していますが、多くの投資家は短期的な見方に傾斜しています。

3点目に、バリュエーションに関連して、一部の投資家は名目GDPと債券利回りの関係性にとらわれていますが、両者の関係性に注目する必要性は推測に基づくもの以外に見当たりません。先進国市場では、1980年代から1990年代にかけては密接な関係が存在していたかもしれませんが、2011年以降、市場の国際化が進む中で、この関係性は大きく損なわれ、直近の3カ月間においても損なわれた状態にあります。さらに驚くべきことに、多くの人々は2021~2022年の名目GDPの見通しと30年債(2051年下期償還)の利回りの間に何らかの関係があると見て、両者を比較しています。しかしながら、FRBが2022年第4四半期まで(0.25%から0.50%へと)利上げを実行しなければ、債券利回りをブートストラップ法で算術的に求める際に、この先1年間の名目GDPは直接的には全く意味を持たなくなります。また、実質利回りの低さを指摘する向きもありますが、HSBCのスティーブン・メイジャー氏が指摘したように、実質利回りとは、金融政策の影響が及ぶ名目利回りと市場に織り込まれたインフレ期待の残余部分に過ぎません。イールドカーブに大きな動きが生じた場合、コメンテーターは「利回りの方向性」に注目するようになります(2005年のコナンドラム(景気拡大局面初期におけるイールドカーブの変動に関する謎)の教訓は忘れ去られたようです)。年限に関しては、5年/30年に顕著なフラットニングの動きが見られ、2年ゾーンのショート・ポジションには非対称性が存在する中で、市場の注目は10年ゾーンに集まっています。また、中国市場の方がキャピタルゲインの魅力は大きいようですが、多くの市場参加者は米金利にフォーカスしています。さらに、ドイツ国債の方がショート・ポジションの非対称性は大きいとも考えられます。この先、債券市場では、米国以外のクロスマーケットに最大の投資機会が存在するように思われます。

テーパリングに関してトンネル・ビジョンが存在

4点目に、政策面では、テーパリング(量的緩和の縮小)に関してトンネル・ビジョンが存在しています。実質利回りやブレークイーブン・インフレ率に多様な影響が生じる見通しをロベコの分析結果は示唆していますが、コンセンサスは名目利回りに集中しています。テーパリングの問題は3月頃には本格的に議論されていましたが、既に過去の話になったように感じられます。2013年当時よりも広範に注意喚起がなされているため、果たしてサプライズが生じることはあるのでしょうか。市場は政策に対する監視の幅を広げるべきでしょう。債務上限問題を巡る綱渡り的な対応、ドイツの総選挙、中国不動産市場における規制強化などの影響の方が、強まるかもしれません。

最後に、新型コロナウイルスの問題に関連して、とりわけイスラエル、スコットランド、フロリダなどの事例を見る限り全く保証はないのですが、市場では数カ月以内の「正常化」シナリオが前提とされています。状況は国レベルで把握されることが多いのですが、特に新学期の日程にばらつきが存在することを踏まえると、正常化の兆候は地域によって異なります。直近3回の新学期開始のタイミングにおいて、ウイルスの感染は再燃しましたが、今回、先進諸国では、数週間以内に収束するかもしれません。あるいは、厳しい冬になるかもしれません。いずれかの結果に対して、断言することなど可能でしょうか。インペリアル・カレッジ・ロンドンが労力を費やして行った最近の予測は、プロの疫学者ですら非常に慎重に可能性と確率を区別する必要があることを示しています。もっとも、コンセンサスのアプローチには、明確なバイアスが存在しています。ここまでの18カ月間に、「正常化」の前提が支配的だった12回のケースではいずれも、期待が裏切られる結果となっています。

債券市場は注目するテーマを限定するようになったように思われます。自ら優先するテーマに固執しつつ、投資機会の地域的広がりからは目をそらし、政策にフォーカスする作業を怠っています。

総じて言えば、債券市場は注目するテーマを限定するようになったように思われます。自ら優先するテーマに固執しつつ、投資機会の地域的広がりからは目をそらし、政策にフォーカスする作業を怠り、家計のバランスシート分析に際してはコホート・ベースのアプローチを見落としています。キンドルバーガー氏から学んだと思われる教訓はほとんどなく、群集心理的なポジショニングを示す証拠は溢れています。 

リスクが一方向でないことは明らかであり、幅広いシナリオを描くことが望ましいと考えています。ドイツでは総選挙を目前に控えて、国債の名目利回りは上昇する可能性があります。グローバルに見ると、製品のパイプライン拡充と在庫補充の動きは、強力な影響を及ぼすかもしれません。また、レジャーやホスピタリティなどのセクターでは、賃金が急速に上昇しています。  

バリュエーションとポジショニングを重視

ロベコでは、逆張り的でバリュー主導の運用哲学を維持する方針です。つまり、バリュエーションとポジショニングを重視するということです。米国債市場では、ベア・スティープニングの相場観は陳腐化したとみています。ドイツ国債市場では、少なくとも10年債利回りが預金金利に接近する局面では、ショート・ポジションを正当化するようなバリュエーションの非対称性は残されています。もっとも、単純にドイツ国債先物をショートするよりも、リスク・リターン特性に妙味があるトレードもあると考えています。

クレジット市場では、ハイイールド債の多くは初回コール日を満期として取引されるため、価格の上昇余地はほとんどないようです。その一方で、ECBによる債券の買い入れが続く中で、最も安定性が高いのはユーロ建ての投資適格債であると考えています。また、スワップ・スプレッドには縮小の余地が存在します。最大の波乱要因は、4月以降、投資適格の金融債と不動産銘柄のハイイールド債のボラティリティが顕著に高まった、中国のクレジット市場と言えるでしょう。

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