Robeco, The Investments Engineers
blue circle

29-06-2015 · インタビュー

ファクター投資に関する10の質問

昨今、投資家の間でファクター投資のメリットに関する認識が高まり、実際にそのメリットを活用しようという動きが見られるようになってきています。投資家は、ファクター投資を単なる補完的なものではなく、投資戦略全体における重要な要素とみなすようになっています。

    執筆者

  • Joop Huij - インデックス責任者

    Joop Huij

    インデックス責任者

年金基金は2つの大きな課題に直面しています。一つは、リターン向上の必要性です。年金基金の大半では、積立金のカバレッジレシオは最低基準をかろうじてクリアしているにすぎません。同時に、カバレッジレシオをこれ以上低下させられないという理由から、リスク選好度合いも弱まっています。ファクター投資は、一見相反するこれらの課題への解決策となるのでしょうか。ファクター投資リサーチ責任者であり、実証的資産評価・株式戦略を専門とするJoop Huijが、年金基金からの10の質問にお答えします。

(1) 機関投資家にとって、ファクター投資を活用するメリットは?

「まず、長期的なポートフォリオのリスク低減とリターン向上が挙げられます。さらに、アセット・オーナーはファクター投資を通じて、リスクとリターンの根源にあるファクターへの理解を深め、把握することができます。その結果、ショックにも耐え得る強固なポートフォリオの構築が可能となります。」 「また、機関投資家は、ファクター投資が学術的根拠により裏付けられることを高く評価しています。金融危機以降、投資スタイルが実際に有効であるという確固たる証拠を求める声が高まっています。明確かつ合理的な根拠のない投資は、今や過去の遺物といえます。」

(2) あるファクターが真に有効といえるのは、どんなときでしょうか?

「新たなファクターに関する研究の多くは、過去のリターンに基づき、多くの前提条件を設けた上で行われています。例えば、取引コストはゼロと想定する、小型株も大型株と同等に容易に取引可能と仮定する、税を考慮しない、といったことが前提条件となっています。こうした新たなファクターの多くは、実際には有効でないことが往々にしてあり得ます。従って、機関投資家が投資戦略に新たなファクターの組み入れを検討する際は、慎重な姿勢で臨むことが求められます。」

「実際に有効であるファクターには、二つの共通点があります。それは、そのファクターの存在を裏付ける十分な経験的証拠があることと、経済理論上の根拠があることです。私は他の研究者と共に、複数のファクターについて、ファクターへのエクスポージャーを持つミューチュアルファンドの運用実績を検証する研究に従事したことがあります。その研究においては、最もよく知られたファクターであるバリュー、モメンタム、低ボラティリティが最も有効であった反面、一般的でないいくつかのファクターについて、有効でないという結果が出ました。」

「研究の多くは、過去のリターンに基づき、多くの前提条件を設けたうえで行われています」

(3) クオリティやサイズといったファクターの有効性は?

「クオリティは、注目を集めるファクターの一つとなっています。その一方で、クオリティの定義が明確でないケースがよく見られます。投資家と研究者が使用する定義は異なり、使用される変数も様々です。自己資本利益率(ROE)のような変数については、学術的証拠がほとんどありません。こうした変数を使用しているケースでは、実際には低ボラティリティやバリューといったファクターによってパフォーマンスが増強されていることがある、と当社は考えています。結果として、実際は異なるパッケージに入った別のファクターになっているのです。」
「とは言っても、ファクターとして、クオリティを完全に否定しているわけではありません。新しいクオリティの変数の中には、経験的証拠が存在するものもあります。」

「サイズ、小型株については、ある程度の経験的証拠は存在するものの、明確なファクターとは考えていません。一方で、機関投資家が株式のファクター投資戦略を採用する際には、投資ユニバースに小型株を含めることをお奨めしています。」

(4) ファクター投資を採用する投資家が増えると、そのプレミアムは消失するでしょうか?

「理論上は、多くの投資家がファクター投資を採用した場合、最も魅力的な市場セグメントの資産価格は押し上げられることになります。そうすると、将来のリターン下落、プレミアム消失につながります。」

「しかし実際にはこうした事象は起こらないと見ています。規模の大きい機関投資家がファクター投資を採用し、多額の資産をファクターに配分する一方で、組織内の障壁によってファクター投資戦略を実践することができない投資家も多く存在します。そうした投資家がファクター投資を採用するためには、一般的には、まず組織の機構や責務、利害の調整等において大掛かりな変革を施すことが必要となります。」

(5) ファクター投資とリスクプレミアム投資の違いは?

「リスクプレミアム投資とスマートベータ投資は、しばしばファクター投資と同じ概念を示す用語として使用されています。その概念とは、戦略的に資産をファクターに配分することです。私は、できればこれらの用語の使用は避けたいと考えます。なぜなら双方とも、ファクターを、リスクを取ることの代償として捉えているからです。しかしながら、実際は、リターン創出のためにこのリスクを取る必要があることを示す経験的証拠はほとんど存在しないのです。」 「リスクによらないでも、プレミアムの存在についての説明は可能です。例えば、資産価格をゆがめる可能性がある投資家の行動バイアスを例にとってみましょう。ファクタープレミアムは、例えばポートフォリオ・マネジャーのキャリアに対する懸念などの、合理的な行動と関連していると当社は考えます。ポートフォリオ・マネジャーの運用パフォーマンスがベンチマークから逸脱して長期にわたり低迷すると、そのキャリアが脅かされる可能性があります。」 「我々は、なぜそのファクタープレミアムが存在するのか、その理由を深く理解することが非常に重要と考えます。理解を深めることにより、ファクタープレミアムへのより適切なエクスポージャーを持つことが可能になります。」

(6) ファクタープレミアムを捉えるための最適な方法は?

「ファクター投資を活用するという選択は正しいといえますが、その成功は、適切に実践できるかどうかにかかっています。ファクター投資は、一般的なアプローチやインデックス投資を採用しても効果を得ることはできます。しかし、確信度の高いアプローチを取れば、より効率的にファクタープレミアムを捉えることができます。ファクター戦略を適切に実践すると、リターン向上、リスク低減、取引コストの削減につながります。優れたファクター戦略により、見返りのないリスク、他のファクタープレミアムとの効果の反作用、不必要な売買という三つの不利益を回避することが可能となります。」

ファクタープレミアムが存在する理由を理解することが非常に重要です

(7) 個々のファクターの配分を変え、ファクターのタイミングを計る必要がありますか?

「何よりもまず、多様なファクターに同時に分散投資することで付加価値を得ることができるということです。さらに、ファクターのタイミングを計るのは非常に難しいことが分かっています。景気循環がファクターのリターンに関与していることやファクターのモメンタムが及ぼす影響を明らかにする研究論文はありますが、ファクターのタイミングに関して決定的な結論を導き出している学術的文献は存在していません。ファクターのタイミングを計るには、二つの大きな障害があります。」

「一つには、ファクターのタイミングを計ると取引コストの増大につながり、トータルリターンに大きく影響しかねません。第二に、投資の選択肢が限られています。市場の幅が限定的であるということです。」

「こうした状況では高いスキルが必要となります。投資可能な選択肢が限定的な場合、戦略を効果的に実施するには、高い正確性が求められるのです。タイミングを計るに当たっての問題は、選択できるファクターがごくわずかしかないということです。これらのファクターのタイミングを計ろうとすると、ほんの数回の投資判断がパフォーマンスに大きな影響をもたらすことになります。リスクとその見返りのバランスという観点からは魅力的な方法とはいえません。当社では、戦略的に選定したファクター配分との誤差が生じる可能性は考慮に入れていますが、その誤差は比較的小さいものです。」

「ファクターのタイミングを計る代わりに、分散という方法を推奨します。分散に加え、パフォーマンスが振るわない期間の下落を取り戻すための期間を考慮し、投資期間は長期に設定するべきと考えます。これは、株式だけでなく社債にも当てはまります。」

(8) 最適なファクター配分に辿り着くには?

「二つの理由から、顧客毎に最適な配分は異なり、それぞれ固有のものになると考えられます。第一に、最適な配分を決める際には投資家の志向を考慮する必要があります。これは投資家のタイプによって異なります。低ボラティリティ株式は下落相場での損失が限定的であり、年金基金の積立比率をより安定させながら株式のプレミアムに対するエクスポージャーを維持することが可能になります。これに対して、バリューとモメンタムは、政府系ファンド(SWF)にとってより魅力的なファクターであるかもしれません。SWFはリターンの最大化をより重視することが多いからです。第二に、ファクターによるソリューションをポートフォリオに組み入れる際には、ポートフォリオの現在のエクスポージャーを考慮する必要があります。」

クオンツに関する最新の「インサイト」を読む

ロベコのニュースレターにご登録いただくことで、いち早く最新のインサイトを入手し、環境に優しいポートフォリオの構築にお役立てください。

最新情報を受け取る

(9) ファクター・ポートフォリオを構築する際、通貨による影響は受けますか?

「通貨がトータルリターンに影響を及ぼす可能性はありますが、ファクターそのものによる影響に比べれば大きくはありません。また通貨は、投資家の志向に合わせてヘッジすることも可能です。通貨については様々な対応方法があるため、個々のニーズに合わせたソリューションの提案が可能です。ロベコでは、例えば通貨にモメンタム戦略を適用するなど、通貨を別の資産クラスとみなしてファクター戦略を実践することは推奨していません。」

重要事項

当資料は情報提供を目的として、Robeco Institutional Asset Management B.V.が作成した英文資料、もしくはその英文資料をロベコ・ジャパン株式会社が翻訳したものです。資料中の個別の金融商品の売買の勧誘や推奨等を目的とするものではありません。記載された情報は十分信頼できるものであると考えておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり、今後予告なしに変更されることがあります。運用状況、市場動向、意見等は、過去の一時点あるいは過去の一定期間についてのものであり、過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、記載された投資方針・戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません。当資料は法律、税務、会計面での助言の提供を意図するものではありません。 ご契約に際しては、必要に応じ専門家にご相談の上、最終的なご判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。 運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況による信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動の影響も受けます。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、投資元本を上回る損失を被ることがあります。弊社が行う金融商品取引業に係る手数料または報酬は、締結される契約の種類や契約資産額により異なるため、当資料において記載せず別途ご提示させて頂く場合があります。具体的な手数料または報酬の金額・計算方法につきましては弊社担当者へお問合せください。 当資料及び記載されている情報、商品に関する権利は弊社に帰属します。したがって、弊社の書面による同意なくしてその全部もしくは一部を複製またはその他の方法で配布することはご遠慮ください。 商号等: ロベコ・ジャパン株式会社  金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2780号 加入協会: 一般社団法人 日本投資顧問業協会