16-07-2018 · インサイト

事実か虚構か:サステナビリティ投資は株式に限られる?

サステナビリティ投資が株式運用を向上させることは多くの投資家が知っています。しかし、真の意味で債券ポートフォリオに活用する投資家は極めて限られています。これは残念なことです。サステナビリティ投資は債券に対しても同様に有効で、市場によっては必要不可欠なリスクマネジメントになり得るからです。

    執筆者

  • Masja Zandbergen-Albers - Head of Sustainability Integration

    Masja Zandbergen-Albers

    Head of Sustainability Integration

サステナビリティ投資が株式だけに有効だという迷信は存在しています。確かに国債の価格は、個々の企業のESG要因よりも、金利やGDPの成長率といったマクロ経済要因に敏感です。いずれは返済されるべき債務にESG問題がどのように影響するのか、理解し難いと考える投資家もいます。

この迷信を解くには結局のところ、ロべコが長年従ってきたクレジット市場の原則 ― ポートフォリオでは常に勝者を選ぶよりも、むしろ敗者を避けることが重要 ― や、リスク削減に努める姿勢に帰着します。敗者を避けるためには、どの債券にもある本質的なリスク、つまり発行体の借入返済能力、言い換えればデフォルトの可能性の入念な分析が必要です。そこでESG分析が有効となります。

国債に関しては、さまざまなESG基準を分析することで、発行する国々を評価することができます。ロべコSAMのカントリー・サステナビリティ・ランキング(CSR)は、各国に関する大量のデータを集め、それをスコア化し、年に2度その情報を更新しています。そのスコアは17の要因を基に計算されるもので、内訳は環境に関するものに15%、社会に25%、ガバナンスには60%配分されています。CSRは国別配分決定に大いに役立ちます。例えば、2017年10月の調査結果では、アイルランドが非常に好評価だった一方でトルコは不芳だったため、債券の運用チームはそれに応じてポートフォリオのリスクを調整しました。

発行体の信用力の評価

またロベコSAMでは、二酸化炭素排出から労使関係や役員構成に関する項目まで、企業のあらゆる詳細なESGパフォーマンスに関する質問票による調査を実施し、コーポレート・サステナビリティ評価(CSA)としてまとめています。その元データは証券固有のものではなく企業そのものに関する情報であるため、株式にも社債にも利用されています。

株式の場合と同様に、集められた情報は全て財務上重要なものでなければなりません。利益率や売上、コストなどの要素に、目に見える影響をもたらすということです。これは、企業の社債返済(または借り換え)能力に直結します。株式に関する分析はアップサイドの可能性に注目しますが、債券の場合、ダウンサイド・リスクを避けることが中心となります。

ESGに関して蓄積された情報は、その債券の投資価値についてのより幅広い分析に組み入れられます。下の図のように、ロベコでは発行体を、サステナビリティ・スコアに加えて、企業の財務状況、事業のポジショニング、企業戦略、企業形態の5項目からなる「Fスコア(=ファンダメンタルズ・スコア)」として評価します。

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全ケースの3分の1に影響

2017年のロベコのクレジット投資の実績では、ESG情報が総合的なファンダメンタルズ分析に実際にマイナスの影響を与えたケースは、投資ユニバ―ス中30%で、プラスの影響を与えたのは3%でした。この結果が債券のポートフォリオ・マネジャーの投資判断に直接影響を与え、株式同様、債券売買の判断材料となっています。

しかし、それぞれのESG要因の相対的な重要度は業界毎に異なります。リスク管理上、石油産業にとっては環境要因と排出削減の必要性がより重要であり、小売業では労使関係、銀行業ではガバナンスが優先されます。食品企業にとっては、より健康的な商品の製造を求めるプレッシャーが高まっています。最近英国議会に提出された資料は、「砂糖は新たな煙草のようなもの」であるとし、相当の税を課すべきと訴えています。これは食品飲料メーカーにとっては将来の収益や営業免許そのものに対する明らかなリスクです1

人気を博すグリーンボンド

債券市場において、独自に浸透したサステナビリティ投資分野の1つがグリーンボンドです。グリーンボンドは、主に新興国市場における風力発電所や浄水施設など、環境プロジェクトの資金調達のために発行される債券です2

仕組みは通常の国債や社債と同じで、大半は投資適格債です。その中には、プロジェクトからの将来の収入(例えば、全国的な電力網に販売される再生可能エネルギーなど)を裏付けとして証券化形式で発行されているものもあります。

2007年に欧州投資銀行と世界銀行が初めてグリーンボンドを発行して以来、市場は堅調に拡大してきました。現在ではロベコを含む主要な投資家にも人気で、一部の債券ファンドの中に組み入れられています。2014年にグリーンボンド・インデックスをスタートしたバンクオブアメリカ・メリルリンチによれば、グリーンボンドの総発行残高は、2017年現在で2,000億米ドルを上回っています3

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