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事実か虚構か:サステナビリティ投資は環境問題に取り組む理想主義者だけのもの?

事実か虚構か:サステナビリティ投資は環境問題に取り組む理想主義者だけのもの?

28-05-2018 | インサイト

数十年を経てようやくサステナビリティ投資が注目されるようになってきましたが、単に環境問題に対応するだけのものだと考える人も未だにいます。また、圧力団体に率いられた一握りの理想主義者だけの関心事だと考えている人もいます。

  • Masja Zandbergen
    Masja
    Zandbergen
    Head of ESG integration
  • Guido Moret
    Guido
    Moret
    Active Ownership Specialist

要点

  • サステナビリティという言葉は、1960年代にいわゆる「グリーン十字軍」と関連してニュースの一面を飾りました。
  • 今日では、ESG(環境、社会、ガバナンス)を重視した投資プロセスは数兆ドル規模にも拡大しています。
  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)を盛り込むプロジェクトなど、広範なものへと発展しています。

前述の迷信が根強く残っているのは、近年のサステナビリティの起源の1つが、1960年代の「世界を救おう」というキャンペーンに端を発しているためです。1969年に設立された「地球の友(Friends of the Earth)」などの組織は、(残念なことに今でも続いている)森林破壊から環境汚染まで、明らかに持続可能性に反するような行為を止めるよう、激しいロビー活動を展開しました。

1980年代には、環境に関して大きな成果が見られました。たとえば、エアロゾルがオゾン層を破壊しているという科学者の警告を受け、フロンガスの使用を段階的に縮小するモントリオール議定書が採択されたことや、危険な殺虫剤であるDDTの使用禁止などです。21世紀に入ると、政府や企業や投資家が主流をなす取り組みとして導入したことで、サステナビリティという言葉の解釈が大きく広がりました。今日では活動家ばかりではなく、あらゆる立場の人を巻き込み、その投資額は何兆ドルにも上っています。

サステナビリティ投資に関する9つの新たな考え方

今すぐダウンロード(英文)

国連主導の取り組み

この流れは、全ての人々の生活向上という更に広範な課題に取り組む、国連の17の持続可能な開発目標(SDGs)にも反映されいます1。SDGsは2015年に発表され、清潔な水の供給、

適正な教育水準、安価なヘルスケアや平等の権利などの根源的な目標が含まれています。これらの目標は、現在193ヵ国によって採択されています。

国連は企業や金融機関の参加を特に要請し、15年以内にこれらの目標を達成するため協力するよう求めており、ビジネス界の役割が非常に重要になっています。対象となるのは、大企業や、石油会社やプラスチック製造企業など直接的に持続可能性に反すると非難されている業種に留まりません。端的にいえば、全ての企業が正しくビジネスを行うことを求めています。

たとえば、銀行は、特に世界金融危機を経た現在においては、高い倫理基準と明確に定義されたリスク文化を構築し、適切な金利による適切な融資の実行に注力すべきです。ヘルスケア企業は、必須医薬品を提供するため、イノベーション、人的資本、公正価格モデルに取り組むべきです。また、飲料メーカーや食品加工企業は、砂糖の使用を控えるなど、より健康的な商品の生産に努めるべきです。

投資家に関していえば、多くの年金基金や、ロベコやロベコSAMを含む資産運用会社が、実践可能な限り多くのSDGsの目標を投資プロセスに組み入れることにより、SDGsを達成するという課題に取り組んできました。世界の生活水準向上のための手段として、自由市場資本主義を活用するという概念は、先行して始まった国連のイニシアティブである責任投資原則(PRI)にも規定されています。2006年にスタートしたPRIには、投資家が投資プロセスに、環境、社会、ガバナンス(ESG)の基準をできる限り取り入れるための6つの原則があります。ロベコとロベコSAMは当初からこれに参加しており、今日、PRIの署名機関は1,800に達しています2

ESGの「S」と「G」

ESGの導入が広まると、自ずと道は開けてきました。サステナビリティは財務上重要であり、企業の業績や株価に直接影響し得るという認識が、企業や株主の間で高まってきたのです。ESGの適用が広がるとともに、サステナビリティはある種の理想主義ではなく、利益を上げるための賢明な手法として認識されるようになってきました。ESGの「E(環境)」は、今も投資家が重視する環境問題を組み入れるものであり、今では再生可能エネルギーなどの分野はビジネスチャンスとして捉えられるようになっています。しかし、以前と違い、今日では「S(社会)」と「G(ガバナンス)」の方がより重視されています。

社会的課題に取り組むことは、単に満足感を得るためのものではありません。満足度の高い労働者の方が生産性も高いという説は研究により実証されており、したがってこれは財務上重要な問題といえます。2011年のペンシルベニア大学ウォートンスクールの研究は、従業員の満足度と長期的な株価リターンの関係を分析しています。それによると、1984年から2009年の期間において、「働きがいのある米国企業100社」で構成された時価加重ポートフォリオの株価リターンは、主要な市場ベンチマークよりも年率平均3.5%、関連する業種別ベンチマークよりも2.1%高い結果となりました3

また当該企業は、それ以外の企業に比べ、事前に予想されていない業績上方修正が圧倒的に多いという結果も明らかとなりました。研究者達は、その結果、(1)従業員の満足度は株主リターンと正の相関関係にあり、経営上の緩みを示すものではない、(2)市場は、人材などの無形資産の価値を十分に織り込んでいない、(3)そのため、社会的に極めて優れた企業を選別してポートフォリオに組み入れることは、投資リターン向上につながる可能性がある、という結論に至りました。

優れたガバナンスも有効

人への配慮という要因と同様に、良好なコーポレートガバナンスが株価を上昇させるという説も、ウォートンスクールがハーバード大学と共同で行った研究によって実証されています。その研究者らは、2003年に主流となっていた24のガバナンス項目を使用し、およそ1,500社の大企業について、1990年代における株主の権利水準を評価する手段として、「ガバナンス指数」を構築しました。そのうえで、指数の下位10%(株主に最も強い権利を与える)の企業の株式を購入し、上位10%(株主の権利が最も弱い)の株式を売却する投資戦略を策定しました4

すると、株主の権利が強い企業は時価がより高く、売上成長率や利益水準も高い一方、資本的支出は低く、企業買収も少ないことが分かりました。仮にその戦略で実際に投資を行っていた場合、サンプル期間では年率8.5%の異常(超過)リターンが獲得できたと結論付けています。

つまり、これはもはや環境問題に取り組む理想主義者だけの問題ではありません。いまや、環境に加えて社会やガバナンス要素の実践によるリタ―ン向上を含む、ESGの全領域に関わるものであり、確実に全ての人に関連する問題なのです。

サステナビリティ投資の真実:“事実”か“虚構”か

ビデオを見る

1国連のSDGsの全リストはこちらからご確認いただけます。(英文) http://www.un.org/sustainabledevelopment/sustainable-development-goals/
2国連のPRIの詳細については、こちらをご覧ください。(英文) https://www.unpri.org/about
3Edmans, Alex, 「株式市場は無形資産を十分に評価しているか-従業員満足度と株価(Does the Stock Market Fully Value Intangibles? Employee Satisfaction and Equity Prices)」(2010年1月20日). Journal of Financial Economics 101(3), 621-640, 2011年9月. SSRNのサイトでご覧いただけます: https://ssrn.com/abstract=985735
4Gompers, Paul A. and Ishii, Joy L. and Metrick, Andrew, 「コーポレートガバナンスと株価(Corporate Governance and Equity Prices)」.Quarterly Journal of Economics, Vol. 118, No. 1, pp. 107-155, 2003年2月. SSRNのサイトでご覧いただけます: https://ssrn.com/abstract=278920 または http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.278920

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