低ボラティリティ効果の存在を1873年まで遡る

低ボラティリティ効果の存在を1873年まで遡る

25-04-2016 | インサイト

近年、過去に遡るデータベースが新たに構築され、今まで出来なかった昔にまで遡ったデータで市場アノマリーを検証することが可能になりました。こうしたデータによる調査研究により、低ボラティリティ効果が19世紀にも存在していたことが明らかになっています。

  • David Blitz
    David
    Blitz
    PhD, Executive Director, Head of Quant Selection Research.
  • Pim  van Vliet, PhD
    Pim
    van Vliet, PhD
    Managing Director, Head of Conservative Equities - Pim van Vliet

要旨:

  • 過去に遡る詳細なデータベースが新たに利用可能になっている
  • 今まで出来なかった昔にまで遡ったデータで市場アノマリーを検証する大きな機会が到来
  • その結果、低ボラティリティ効果は19世紀にも存在していたことが確認された

新たなデータベース

これまで、学術研究の大多数においては、著名なCRSP(証券価格調査センター)のデータベースが用いられてきました。シカゴ大学が管理しているこのデータベースには、1926年以降ニューヨーク証券取引所に上場している全米国株式、アメリカン証券取引所(AMEX)上場株式、およびテクノロジー株が中心のナスダック取引所上場株式に関する全ての株式データが収録されています。目下のところ、利用可能なデータベースとして最も長期間を網羅し最も正確なものといえますが、このデータベースが一定期間網羅しているのは米国1国のみとなっています。

近年、これ以外のデータベースが利用可能となり、実証的な金融論文で取り上げられるケースが増えてきました。ファクター・プレミアムの信頼性を評価する上で、追加的な証拠は非常に重要です。例えば、Dimson、Nagel、およびQuigleyは、1955~2001年の期間における英国市場のバリュー・プレミアムを検証し、その結果を2003年に発表しました。最近では、2015年にGoetzmannとHuangが、サンクトペテルブルクの株式市場における株式リターンを収めた全く新たなデータベースを研究し、ロシア革命以前の1865~1914年の期間にも、モメンタム・ファクターが機能していたことを示しました。GeczyとSamonovは、1801年から2012年という長期にわたる米国株式のデータベースを用い、その研究結果を2015年に発表しています。両氏もまた、19世紀にモメンタム・プレミアムが存在していたことを実証しました。

こうした過去に遡る新たなデータベースの登場は歓迎すべきものです。これによって、既存の学説の誤りを正す機会が新たにもたらされます。市場アノマリーに対しては、運や偶然の結果に過ぎないという懐疑的な見方があります。これに対し、これまで以上に昔に遡ったデータによる検証は、最新の証拠が得られるという利点に加えて、新鮮な見方をもたらし、アノマリーが存在する理由への洞察にもつながります。

本稿では、20世紀における低ボラティリティ効果の主な研究結果について簡潔に論じます。また、今までになかったデータを用いて19世紀まで遡って行われた、低リスク効果の新たな検証結果も紹介します。

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20世紀:米国の低リスク株式が高リスク株式をアウトパフォーム

長期的に見て、低リスク株式は高リスク株式をアウトパフォームしています。ロベコでは、欧州と日本に関しては2007年に、新興国市場に関しては2012年に実証結果を発表しています。一方HaugenとBakerは、2012年に世界市場の実証結果を非常にうまく概観しています。

本稿ではCRSPデータベースを用い、(1)株価が1米ドルを上回る、(2)時価総額上位1,000銘柄のみを対象として検証を行いました。こうした大型株に限るという基準を設けることで、テクニカル要因による影響を受けない、実際に投資可能なデータベースを構築しています。各銘柄は過去3年のボラティリティに基づいて10個のポートフォリオに仕分けられ、四半期毎にリバランスを行いました。ポートフォリオのリターンは均等加重としています。 図表1は、低ボラティリティと高ボラティリティのポートフォリオの累積パフォーマンスを表しています。両ポートフォリオは共に100銘柄で構成されています。

図表1では、低ボラティリティ株式が高ボラティリティ株式をアウトパフォームしていることが示されています。CAPM(資本資産価格モデル)の理論では、これとは逆の結果が想定されるはずであり、矛盾する結果となっています。ここでは年率リターンの差は4%であり、リスク調整後のCAPMによるアルファ値の差は14%となっています。1929年に低ボラティリティ株式に100米ドル投資していた場合、2015年初めには40万米ドルに増えている一方、高ボラティリティ株式に投資した場合には2万米ドルにとどまります。低ボラティリティ株式の投資リターンは、高ボラティリティ株式の20倍となっています。高ボラティリティ株式のパフォーマンスが非常に低水準にとどまることが顕著に表れた結果となっています。

図表1 | 低ボラティリティ株式と高ボラティリティ株式の累積パフォーマンス(1929年~2014年)

出所:ロベコ・クオンティテイティブ・リサーチ、CRSP

19世紀:ベルギーの低リスク株式が高リスク株式をアウトパフォーム

CRSP データベースには1929年の株式市場の大暴落とその後の大恐慌のデータが含まれています。しかしながら、CRSPのデータの開始時点である1926年よりもかなり以前から株式市場は存在しており、これらの忘れられた数十年間にも興味深い強気相場と弱気相場が存在していました。例えば、1873年と1907年の株式市場の暴落については、総じて学術的な実証研究が十分ではありません。

我々の知る限りでは、19世紀における低リスク・アノマリーに関する唯一の実証結果は、AnnaertとMensahが2013年に発表した研究に示されています。1873~1914年の期間にベルギー株式市場において低ベータ効果が存在したことを、両氏は示しています。現在では、ベルギーの株式市場規模は相対的に小さい(MSCIワールド指数の1%未満)といえますが、19世紀末には世界最大の株式市場の一つに名を連ねていました。ベルギーは、英国に続き、欧州大陸で最初に産業革命が起こった国でした。

両教授は、ベルギー株式市場に上場し、少なくとも2年間の株価データが存在する平均237銘柄を対象に分析しています。この結果、相当な低リスク効果が存在していたことを示す証拠を発見しました。図表2は、市場ベータに基づき仕分けられた5つのポートフォリオの分析結果を示しています。点線はCAPMで想定されるリスク・リターンの関係を示しており、一方、曲線はリターンと市場ベータの関係を実際に実証研究した結果を示しています。曲線は上向きで始まっていますが、高ベータ株式になるほど急降下しています。

図表2 | 1873~1914年の期間におけるリスク・リターン関係

出所: Annaert and Mensah、2013年、データは表2のパネルEおよびGより引用

1873~1914年の期間にも、低リスク銘柄は高リスク銘柄をアウトパフォームしていました。我々は、このような「考古学的な金融」調査を以下の2つの理由から評価しています。

第1に、こうした全く新しいデータベースにおいて低ボラティリティ、モメンタム、バリューといったアノマリーの存在が確認されることにより、これらのアノマリーが単にデータマイニングの結果出現する兆候に過ぎないものとは考えにくくなります。これは朗報といえます。クオンツ研究にとって最大のリスクの一つは、単に偶然の一致に過ぎない誤ったパターンを見つけて意味のあるものと認識してしまうことです。そのため、我々は長期にわたるデータベースを選好し、徹底的に検証されたファクターのみを信頼に足るものとみなしています。

第2に、新たなデータの活用により、株式市場のアノマリーをより深く理解することが可能となります。例えば、19世紀には資金が金融プロフェッショナルにより運用されるケースはほとんどなく、ベンチマークも存在していませんでした。低ボラティリティ効果の説明の一つとして、ベンチマークの役割の曖昧さが挙げられることがあり、これは資産所有者と資産運用者との間のエージェンシー問題につながります。新たな証拠の出現により、ベンチマークだけでは、低リスク株式が高いリスク調整後リターンを生み出す理由を説明できないことが示されています。

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