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クレジット・アウトルック:貿易と信頼関係

クレジット・アウトルック:貿易と信頼関係

06-10-2022 | 四半期アウトルック
バリュエーションは割安になりましたが、現時点では十分に広がりを見せていません。本格的な景気後退入りのシナリオが織り込まれたことを示す証拠が、さらに必要になります。
  • Victor  Verberk
    Victor
    Verberk
    CIO Fixed Income and Sustainability
  • James Stuttard
    James
    Stuttard
    Head of Global Macro team and Portfolio Manager
  • Sander  Bus
    Sander
    Bus
    CIO High Yield and Lead Portfolio Manager Global High Yield Bonds

要点

  • 金融政策、財政政策、地政学政策に転換点が到来
  • クレジット・サイクルとビジネス・サイクルはもう少し進行が必要
  • 中央銀行はこれまで以上に市場を動かす存在に

転換点が到来

先日、ロベコのマルチ・アセット・チームは「混迷の時代」というタイトルの5カ年見通しレポートを公表し、市場参加者として対応が求められる、多くの短期的、長期的、地政学的な転換点について考察しました。クレジット・チームも同様の見方をしています。

転換点を迎えているものの1つとして、グローバル・サプライチェーンが挙げられますが、これは平時においてのみ正常に機能することが確認されています。「EUロシア(Eurussia)」の関係は破綻しました。今後は、世界で最も重要な二国間関係である「中国アメリカ(Chimerica)」の関係を、注意深く見守る必要があります。貿易期待理論によると、貿易は信頼関係が存在する場合に円滑に行われます。私たちは今、新しい軍事同盟の枠組みに沿った”脱グローバル化”(グローバル・マクロ・チームが好んで用いる言葉を使えば”再グローバル化”)の局面を迎えています。

このような長期的なトレンドと並行して、中央銀行が”インフレとの戦い”という自らの戦いを続ける、短期的なトレンドが進行しています。当面は、インフレ(あるいはインフレ期待)を正常化するためには経済に痛みが伴うという発言を額面通りに解釈して、2つのマンデートの達成を期待しないことにします。

つまり、企業収益、投資、レバレッジド・ローンのデフォルト率、市場全体のボラティリティなどの観点から、景気後退に伴う痛みがさらに発生することになります。バリュエーションは割安になりましたが、現時点では十分に広がりを見せていません。

本格的な景気後退入りのシナリオが織り込まれたことを示す証拠が、さらに必要になります。テクニカル面に注目すると、中央銀行はさらに利上げを進めると見られ、また、多くの国では量的引き締め(QT)の開始が避けられないでしょう。総合的に判断して、サイクルが底打ちするタイミングの予想を、今年の遅い時期へとわずかながら先送りすることとします。

中央銀行はどこまでやるか

政策当局はこの10年あまりの間、経済成長とインフレのトレンドを大幅に見誤ってきました。この10年間、物価がほとんど上昇しない中で量的緩和(QE)が実行された結果、資産価格のインフレが発生しました。その後、インフレは一過性の現象であるとの見方が示されました。

そして足元では、賃金や企業の価格決定力を通じてインフレが経済に定着することを、中央銀行が懸念する段階に入っています。これまでの経緯は、インフレを予想すること、そしてインフレを管理するプロセスが、本質的にいかに難しいものであるかを物語っています。つまり、政策判断ミスを想定しなければならないことになります。

インフレ期待を抑制するためには、経済の需要サイドに痛みを生じさせなければならないと、中央銀行は考えています。どのような性質の痛みが生じ得るのか、来るべき景気後退のタイミングと潜在的な深刻度について何がわかるのかについて、判断材料を得るために、ロベコはヒストリカル分析を行いました。そのうちのいくつかを紹介しましょう。

サイクルのどの段階にあるかを探るヒント

  • 第1に、歴史的に米サプライマネジメント協会(ISM)の景況感指数が60から50に低下すると、クレジット・スプレッドは拡大する傾向があります。景気後退入りが認識されると、同指数や購買担当者景気指数(PMI)は47~48といった水準を下回ることが一般的ですが、そうなって初めて、通常は市場価格に織り込まれるようになります。今回もまた、この2つの指数が有益な指標であるとすれば、まだその段階には至っていません。
  • 第2に、引き締めサイクルの最終盤には、非農業部門雇用者数の平均増加幅は20万人未満に減少します。足元では、この水準をはるかに上回っています。
  • 第3に、歴史的に、景気後退局面における平均的な金融環境は、現在よりもはるかに逼迫しています。この指標を見る限り、金利、原油価格、株価に対する影響はさらに強まる余地があります。
  • 第4に、賃料などの粘着性の強いインフレ項目は、引き続き上昇傾向にあります。また、アトランタ連銀の賃金上昇トラッカーは、明確に落ち着く兆しを示していません。

大方の指標を見る限り、サイクルの中で景気後退局面には達していないというのが、ロベコの全体的な結論になります。

次に、市場サイクルに注目しましょう。景気後退に関連するクレジットの弱気相場は、歴史的に少なくとも1年半は継続しますが、まだ9カ月しか経過していません。また、クレジット・スプレッドは150bp以上拡大することが一般的ですが、現時点ではその半分にも達していません。

引き締めサイクルの終了に近づくタイミングを正確に見極めることはできません。

しかし、金利のピークがクレジット・スプレッドのピークに先行することは、歴史的に確認されています。また、平均的には、最後から2番目の利上げの時期に、金利がピークに達することもわかっています。ロベコはこの前提に基づいて、今年11~12月に金利はピークに達する可能性があるとの結論に至りました。

今回の四半期アウトルックのセッションにおいては、中国に関する議論はほとんど行われませんでした。グローバル経済を牽引する古い機関車が、今回もその役割を果たすと想定するべきでないことは明らかです。例えば、経済成長見通し、債務残高、非常に高い水準の若年失業率などは、懸念すべき深刻な問題です。また、経済活動を抑制する新型コロナウイルス政策も、プラスには作用しません。

極端に弱気にはなりたくありませんが、その一方で、クレジット・サイクルの最終段階を迎えるに際して、いくぶん忍耐強くなる必要があります。

基本シナリオを変え得るような、ポジティブなテール・リスクもいくつか見受けられます。第1に、ウクライナ戦争、あるいは景気後退そのものが予期せぬ形で幕引きとなれば、原油価格がさらに大幅に下落する契機になり得ます。これは、インフレと経済成長にとって好ましいシナリオであり、FRBが引き締めサイクルを中断する理由になるかもしれません。第2に、企業の価格決定力は予想以上の底堅さを発揮し、その結果、経営の健全性に好影響を与える可能性があります。総じて見れば、弱気相場のあらゆる側面が確認されたとは思いませんが、徐々にその段階に入りつつあります。

バリュエーションの魅力は増す

楽観的な見方をすれば、年初来、クレジット、国債、株式の間に存在する正の相関が、多大な痛みをもたらしてきたものの、その結果、バリュエーションは大幅に改善しています。「株式60%、債券40%」から構成される典型的なバランス型ファンドは18%値下がりし、債券市場にはここ何年もの間で最悪の売り圧力がかかりました(トータルリターン・ベース)。裏を返せば、市場価格がより魅力的な方向に向かうようになったことになります。

欧州のスワップ・スプレッドについては非常に前向きに見ています。セクター間の相対価値に注目すると、リスク調整後ベースで、時系列的に最も割安な領域と考えられます。背景要因として、ドイツ国債の希少性とレポ市場における非常に逼迫した需給関係が挙げられますが、これはQEに伴う多くの副作用の1つと言えるでしょう。

その結果、国債をベンチマークとして参照する投資家にとって、欧州のクレジット・スプレッドは米国のクレジット・スプレッド対比で割安になっています。また、カバードボンドや政府機関債を始めとする、質の高い投資適格債が極めて割安になっています。もっとも、アセット・スワップ・スプレッド(ASW)やスワップ対比のスプレッドに注目すると、いまだ割安感は見受けられません。この先数カ月の間に、ECBが何らかのQTプログラムを実施した場合、ドイツ国債の希少性の問題は、解消される可能性があります。

次に、米ドルのハイイールド債市場に注目すると、オプション調整後スプレッド(OAS)の過去平均は540bpとなっています。足元で、その水準に近づきつつありますが、景気後退局面においては、その2倍程度の水準に拡大することも珍しくありません。現在のスプレッドには、デフォルト率の上昇やその他の予期せぬリスクのプレミアムが反映されていません。もっとも、市場が弱含む中で、向こう1年間の超過リターンがプラスに転じる段階に入る可能性は高いようです。

一方、一般に景気後退局面においては、米ドルの投資適格債のOASは200bpを上回る水準に達します。足元の水準は150bp近辺であり、その段階には達していません。欧州市場では、スワップ・スプレッドの影響によってクレジット・スプレッドはさらに拡大しているものの、(流動性リスクではなく)クレジット・リスクのプレミアムは、基本的にインデックス・ベースでのベータのオーバーウェイトを正当化するような水準に達していません。

また、軟調なトレンドに過度に引きずられることの危険性を認識して、企業収益や株価指標にも参考情報として注目しています。いくつか事実を紹介しましょう。第1に、ナスダック総合株価指数の構成銘柄の半分は50%以上も下落しました。第2に、株価売上高倍率で見ると、世界のフィンテック銘柄の株価下落が行き過ぎであることはほぼ確実です。第3に、(実体のあるキャッシュフローとビジネスモデルを有する)FAANG銘柄(最大手IT企業群)の株価は、ピークから30~70%下落しました。最後に、欧州の景気敏感株/バリュー株は、ディフェンシブ株対比で、歴史的に最も安い水準にあります。デュレーションの長い資産が打撃を受けるなど、景気後退シナリオがある程度織り込まれたことは明らかです。

図表1:市場のサイクル

マーケット・セグメントに対する我々の見解のマッピング  出所:ロベコ、2022年9月

FRB(あるいは他の中央銀行)と戦うな

中央銀行による流動性を巻き戻す動きが、引き続き原動力となっています。株式およびクレジットのリターンと、世界の主要な中央銀行のバランスシートの総額の変化との間には、引き続き正の相関が存在します。QEからQTへの移行は、資産価格を大幅に押し下げる方向に作用します。

インフレの正常化が重要な優先課題であるというメッセージを、中央銀行は非常に明確に打ち出しているため、近い将来にQEプログラムが再開されて、市場を下支えするという展開は想定されません。むしろ、ボラティリティの上昇を予想するべきでしょう。

最後から2番目の利上げのタイミングまでは数カ月間の猶予があり、金利が安定したとしても、利回りの低下とクレジット・スプレッドの拡大という期間の到来が、歴史的に想定されます。

混迷の時代には歴史から学ぶべき

混迷の時代が始まりました。ビジネス・サイクル、金融政策のサイクル、人口動態や地政学に関連する長期的なサイクル(恒久的な労働力不足の時代に向かっているのでしょうか)の転換点の存在が、現状の分析を複雑にしています。

歴史が何らかの教訓を与えてくれるのであれば、ビジネス・サイクルはもう少し進行する必要があると考えています。また、中央銀行が過剰に反応するリスクが存在する一方で、市場には本格的な景気後退入りのシナリオが総じて織り込まれていないと見ています。クレジット・スプレッドが拡大したことを踏まえて、一部の市場において買いを入れ始めているものの、ベータのオーバーウェイトを主張するには、引き続き忍耐強くあることが肝要でしょう。

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