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事実か虚構か:サステナビリティ投資はパフォーマンスを犠牲にする?

事実か虚構か:サステナビリティ投資はパフォーマンスを犠牲にする?

29-01-2018 | インサイト

サステナビリティ投資には、他のどの投資スタイルより多くの「迷信」がついて回ります。真っ先に取り上げるべき迷信は、「サステナビリティ投資は、理想と思しきものを追求するため、リターンを代償にしパフォーマンスを犠牲にする」という考え方でしょう。

  • Masja Zandbergen
    Masja
    Zandbergen
    Head of ESG integration
  • Guido Moret
    Guido
    Moret
    Active Ownership Specialist

要点

  • 環境・社会・ガバナンス(ESG)を運用に組み入れると十分なリターンが得られない、という考え方があります。
  • 実際には、ESG活用により、リスク低減、パフォーマンス向上につながることが、研究により明らかになっています。
  • サステナビリティ投資の導入は、豊富な情報を適切に反映した投資判断につながります。

では、パフォーマンス悪化という迷信はどこから来るのでしょうか。サステナビリティを導入するには初期投資が必要な場合もあり、実践するにはお金が掛かります。それがパフォーマンス悪化という説の理由になっている面があります。確かに、エネルギー企業が再生可能エネルギーにシフトするため設備を一新する場合、数百万ドルの設備投資が必要となります。また、従業員に適正な水準の報酬を支払うサプライヤーから製品を仕入れようとすれば、コストは上昇するでしょう。あるいは、明確には表れにくい例ですが、人材の多様化が進んでいない企業が人材コンサルティング会社等を雇うことが必要になれば、コストが増加し短期的な収益は減少します。

つまり、理論上は、サステナビリティに真剣に取り組む企業ほどパフォーマンスが劣後することになります。しかし、実際には、多くの場合その逆になります。企業や投資家がESG原則を導入することがパフォーマンス向上につながる結果が認められています。これは、たとえば気候変動や企業の不正行為への対処のために、ESGの3つの側面全ての水準が引き上げられることにより、リスクを低減できることが主因となっています。

ESGが価値を減少させず、むしろ増加させること、またその程度については、オックスフォード大学とアラベスク・パートナーズが2015年に発表した「From the Stockholder to the Stakeholder: How Sustainability Can Drive Financial Outperformance(株主からステークホルダーへ:サステナビリティによる財務上のアウトパフォーマンスの創出)」という研究により明らかになっています 1。この研究では、学術研究、業界レポート、新聞記事、書籍など200件以上の情報ソースを分析した結果、「検証した文献の80%で、良識あるサステナビリティの実践は投資パフォーマンスにプラスの影響をもたらすことが示されている」と結論づけています。

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真に重要なESG課題に注目

ESG情報を意思決定プロセスに取り入れて意思決定の改善を図るに当たり、最も重要なのは、投資の観点を考慮に入れ、財務上重要な課題だけを分析対象とすることです。それこそが事業の核心に影響を及ぼすのです。言い換えれば、長期的な企業業績に直接財務上の効果をもたらし、投資リターンに波及するようなESG課題のリサーチに注力すべきです。公益企業にとっては、事業運営におけるエネルギー効率やエネルギー転換戦略に関連する課題がそれに当たります。銀行の場合は、ガバナンス、リスク管理文化、プロダクト・スチュワードシップといった課題が該当するでしょう。

これが違いを生み出すことは、研究により明らかにされています。ハーバード・ビジネス・スクールによる2015年の調査では、重要なESG課題における企業の実績や開示状況が、その企業の株価と直接関係していることが初めて示されました。「Corporate Sustainability: First Evidence on Materiality(企業のサステナビリティ:重要性に関する初の実証)」と題するこの論文は、財務上の利益が資産価値に波及することを明確に立証しています 2

また、ESGの導入は投資機会にもリスクの低減にもつながります。たとえば、電気自動車の普及というトレンドにより、自動車メーカーだけでなく、電池用リチウム等の新しいスマート素材を含むサプライヤーへの投資機会も生まれています。一方で、ESGがリスク低減に果たす役割については、安価な労働力に依存してきた服飾や小売等の業界におけるサプライチェーンの問題が、ESGの活用により顕在化してきたことを見れば明らかです。ESGのこうした機能により、投資家が「ベスト・イン・クラス」アプローチで株式や債券の銘柄選択を行う場合に、良い銘柄と悪い銘柄を選別することが可能になります。

ビジネスモデルを変革する

これまでの点を総合すると、増え続ける実証結果から、現在サステナビリティの取り組みを着実に進め続けている企業は、将来その収穫を手にする、という結論が得られます。サステナビリティが事業そのものの救世主となることさえあり得ます。たとえば、石油企業は徐々にビジネスモデルの改革を進め、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を図っています。自動車メーカーは電気自動車へのシフトを進め、小売業界では人権問題への対応実績が立証されたサプライヤーだけに仕入先を限定する動きが進んでいます。

現在二酸化炭素排出量の削減に努めている企業は、将来排出量を制限する規制が導入された場合、新たな規制や政策への対応において有利な立場に立つでしょう。この問題は不動産企業にとって既に課題となっているほか、事実上全ての公益企業にも当てはまります。また、今日効率性を向上させることは、先々のコスト削減と収益拡大につながります。

簡潔に言えば、サステナビリティ課題を考慮することにより、より豊富な情報を適切に反映した投資判断を行うことが可能となり、それが長期的なリターンにつながっていくのです。だからこそ、ロベコはサステナビリティの効力を強く確信しており、株式、債券のファンダメンタルズ運用、クオンツ運用にわたり、ESG分析を投資プロセスに統合しているのです。

1 Clark, Gordon L. and Feiner, Andreas and Viehs, Michael 「From the Stockholder to the Stakeholder: How Sustainability Can Drive Financial Outperformance(株主からステークホルダーへ:サステナビリティによる財務上のアウトパフォーマンスの創出)」(2015年3月5日) SSRNより入手可能です。https://ssrn.com/abstract=2508281 または http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.2508281

2 Khan, Mozaffar and Serafeim, George and Yoon, Aaron S. 「Corporate Sustainability: First Evidence on Materiality(企業のサステナビリティ:重要性に関する初の実証)」 (2016年11月9日) The Accounting Review, Vol. 91, No. 6, pp. 1697-1724で発表。SSRNより入手可能です。https://ssrn.com/abstract=2575912 または http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.2575912

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