japanjp
マルチファクター・ポートフォリオ:「組合せ」か「統合」か

マルチファクター・ポートフォリオ:「組合せ」か「統合」か

26-02-2018 | インサイト

ファクター投資のメリットは多くの投資家が認めている一方、その実践方法については意見が一致していません。重要な問題となるのは、単一ファクターという「パーツ」を組み合わせるべきか、ボトムアップでマルチファクターを統合したポートフォリオを構築するべきかという点です。

  • David Blitz
    David
    Blitz
    Head of Quant Research
  • Viorel Roscovan
    Viorel
    Roscovan
    PhD, Researcher
  • Milan Vidojevic
    Milan
    Vidojevic
    Quantitative Researcher

要点

  • ボトムアップによる統合と単一ファクターの組合せを比較しました。
  • 一般的なファクターによる運用戦略は、改良されたファクターによる運用戦略に比べて最適とは言えません。
  • 投資目的、および実務上問題となる事項の考慮が鍵となります。

投資運用の世界で今日最も急速に関心が高まりつつあるテーマの1つとして、ファクター投資が挙げられます。至極妥当な理由の下で、単一ファクター、もしくはいくつかの特定のファクターのみにフォーカスする投資家もいますが、一般的には、長期的に大きなプレミアムをもたらすことが実証された幅広いファクターに分散されたポートフォリオを保有すべきという見方が主流です。

マルチファクターに配分する投資を通じ、さまざまなファクターへのエクスポージャーを持つことによって、特定のスタイルに起因する短期的なアンダーパフォーマンスのリスクに資産を晒すような運用戦略への過度な集中を避けることができます。

クオンツに関する最新の「インサイト」を読む
クオンツに関する最新の「インサイト」を読む
配信登録

「ファクターの組合せ」対「マルチファクター統合」

重要な問題となるのは、単一ファクターという「パーツ」を組み合わせるのか、ボトムアップでファクターを統合したポートフォリオを構築していくのかの選択です。ファクター組合せのアプローチは、選択したファクターへのエクスポージャー最大化を目指して構築された複数の単一ファクター戦略に、資産を配分していくことになります。このアプローチは透明性が高く、パフォーマンスの要因分解も容易で、戦術的なファクター配分も可能になります。

しかしこのアプローチは、ある特定のファクターへのエクスポージャーを狙う戦略が、得てして他のファクターへの負のエクスポージャーを意図せずにもたらすというリスクを無視しています。そのため、単一ファクターを組み合わせることは必ずしも最適とは言えず、ポートフォリオ全体として見たときに、意図せざるエクスポージャーを持つ結果になってしまうこともあり得ます。統合アプローチの支持者はこの点を主な根拠に、最初にファクターを最適に組み合わせる方がより望ましいパフォーマンス特性を達成できると主張しています。統合ファクタースコアが最も高い銘柄を選択することによってそれが可能となります。このアプロ―チがもたらす利点としては、取引コストの相殺売買回転率の低下が挙げられます。

「一般的」対「改良型」ファクター

もう一つ重要なのは、「一般的な」単一ファクターモデルをベースとした単一ファクター戦略と、他のファクターへの意図せざるエクスポージャーを排除するよう設計された「改良型」単一ファクター戦略とを区別することです。一般的な単一ファクター戦略は、改良型ファクター戦略に比べ最適とは言えません。例えば、一般的なバリュー戦略の中には、そもそもバリュー・プレミアムへの十分なエクスポージャーを提供しないものさえあります。それ以外の一般的なバリュー戦略の中にはバリューへのエクスポージャーが高いものもありますが、そうした戦略は往々にして、バリュー以外のファクターへの大きな負のエクスポージャーを取ることでようやくそれを実現しているのです。

改良型単一ファクター戦略は、そのような欠点を克服しつつ、単一ファクターというパーツが持つ多くの利点をもたらします。例えば、バリュー戦略にモメンタムとクオリティ・ファクターへのエクスポージャーを加えることで、いわゆる「バリュー・トラップ(正当な理由があって安値に放置された銘柄)」を避けることができます。また、バリュー・ファクターをモメンタムやクオリティに加えることで、最も割高な銘柄を避けることにつながります。他のファクターは限定的に統合されるのみであり、主なリターンの源泉はあくまでも選択したファクタープレミアムです。このような「改良型」ファクター戦略はさらにマルチファクター戦略という器へと組み込むことが可能ですが、興味深いことに、ファクターを組み合わせてマルチファクター戦略を組み立てる手法を探る文献において、「改良型」ファクター戦略を徹底的な分析対象としているものは見当たりません。

より優れているのはどちらのアプローチか?

ボトムアップによる統合と単一ファクター戦略の組合せ-このいずれがより優れているかの研究において、Ghayur氏、 Heaney氏、 Platt氏(2016年)は、結局のところ、アセット・オーナーが持つ目的によって選好すべきアプローチは異なると主張しています。どちらのアプローチも有効な選択肢となり得るのです。

Leippold氏とRueegg氏(2017年)は、多様なファクターの組合せを考慮し、より長期間でしっかりとした統計上の検証を行ったうえで、統合されたポートフォリオは組合せによるポートフォリオをアウトパフォームはしないと結論付けています。統合アプローチでは、より効果的なポートフォリオ分散によりポートフォリオ全体のリスクを低下させると判明したものの、そのリスク低減はリターンの低下を伴っていました。実際に、2つのアプローチのリスクの違いは、統合アプローチが持つ、低リスク・アノマリーへのエクスポージャーの高さによって説明がつきます。両名の研究では、どちらか一方のアプローチが優位にあると言える証拠は見出されませんでした。

以上をまとめると、実証研究上では、統合アプローチと組合せアプローチに大きな差異はないように見えます。

実務上の意味合い

仮に、統合アプローチが組合せアプローチよりも本質的に優れているわけではない場合、あるいはその逆の場合、ファクター・ポートフォリオをどのような方法で構築するかは重要でない、と言えるのでしょうか。決してそのようなことはありません。取引コストが無く、自由にレバレッジを増やしたり減らしたりできるような理論上の世界では、利用可能なあらゆるファクター戦略を使って、望ましいファクター特性を実現することができます。しかし現実の世界では、投資家が一度に投資できる金額は限られ、取引コストの影響は重大で、レバレッジの適用は厳しく制限されています。魅力的なファクター・ソリューションとは、定められた水準のアクティブリスクに応じて最大のファクター・エクスポージャーを提供し、かつ他のファクターの影響も無視しないものなのです。

組合せか統合アプローチかに拘らず、改良型のファクター戦略は、一般的な単一ファクターによるソリューションよりも通常好ましいと言えます。改良型では、他のファクター特性が影響してリターンにマイナスに寄与すると見込まれる銘柄をポートフォリオに組み入れないために、限定的にファクターの統合を行っています。したがって、そのような改良型単一ファクター戦略は、マルチファクター戦略という器に組み入れることも可能です。もしくは、投資家は、最も効率的な方法で複数のファクターへの高いエクスポージャーを提供するよう設計された、統合型の戦略を選択することもできます。

重要事項

当資料は情報提供を目的として、Robeco Institutional Asset Management B.V.が作成した英文資料、もしくはその英文資料をロベコ・ジャパン株式会社が翻訳したものです。資料中の個別の金融商品の売買の勧誘や推奨等を目的とするものではありません。記載された情報は十分信頼できるものであると考えておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり、今後予告なしに変更されることがあります。運用状況、市場動向、意見等は、過去の一時点あるいは過去の一定期間についてのものであり、過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、記載された投資方針・戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません。当資料は法律、税務、会計面での助言の提供を意図するものではありません。

ご契約に際しては、必要に応じ専門家にご相談の上、最終的なご判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。

運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況による信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動の影響も受けます。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、投資元本を上回る損失を被ることがあります。弊社が行う金融商品取引業に係る手数料または報酬は、締結される契約の種類や契約資産額により異なるため、当資料において記載せず別途ご提示させて頂く場合があります。具体的な手数料または報酬の金額・計算方法につきましては弊社担当者へお問合せください。

当資料及び記載されている情報、商品に関する権利は弊社に帰属します。したがって、弊社の書面による同意なくしてその全部もしくは一部を複製またはその他の方法で配布することはご遠慮ください。

商号等: ロベコ・ジャパン株式会社  金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2780号

加入協会: 一般社団法人 日本投資顧問業協会