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12-10-2017 · インサイト

マルチファクター・ポートフォリオ:「組合せ」か「統合」か

ファクター投資のメリットは多くの投資家が認めている一方、その実践方法については意見が一致していません。重要な問題となるのは、単一ファクターという「パーツ」を組み合わせるべきか、ボトムアップでマルチファクターを統合したポートフォリオを構築するべきかという点です。

    執筆者

  • David Blitz - チーフ・リサーチャー

    David Blitz

    チーフ・リサーチャー

投資運用の世界で今日最も急速に関心が高まりつつあるテーマの1つとして、ファクター投資が挙げられます。至極妥当な理由の下で、単一ファクター、もしくはいくつかの特定のファクターのみにフォーカスする投資家もいますが、一般的には、長期的に大きなプレミアムをもたらすことが実証された幅広いファクターに分散されたポートフォリオを保有すべきという見方が主流です。

マルチファクターに配分する投資を通じ、さまざまなファクターへのエクスポージャーを持つことによって、特定のスタイルに起因する短期的なアンダーパフォーマンスのリスクに資産を晒すような運用戦略への過度な集中を避けることができます。

「ファクターの組合せ」対「マルチファクター統合」

重要な問題となるのは、単一ファクターという「パーツ」を組み合わせるのか、ボトムアップでファクターを統合したポートフォリオを構築していくのかの選択です。ファクター組合せのアプローチは、選択したファクターへのエクスポージャー最大化を目指して構築された複数の単一ファクター戦略に、資産を配分していくことになります。このアプローチは透明性が高く、パフォーマンスの要因分解も容易で、戦術的なファクター配分も可能になります。

しかしこのアプローチは、ある特定のファクターへのエクスポージャーを狙う戦略が、得てして他のファクターへの負のエクスポージャーを意図せずにもたらすというリスクを無視しています。そのため、単一ファクターを組み合わせることは必ずしも最適とは言えず、ポートフォリオ全体として見たときに、意図せざるエクスポージャーを持つ結果になってしまうこともあり得ます。統合アプローチの支持者はこの点を主な根拠に、最初にファクターを最適に組み合わせる方がより望ましいパフォーマンス特性を達成できると主張しています。統合ファクタースコアが最も高い銘柄を選択することによってそれが可能となります。このアプロ―チがもたらす利点としては、取引コストの相殺や売買回転率の低下が挙げられます。

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「一般的」対「改良型」ファクター

もう一つ重要なのは、「一般的な」単一ファクターモデルをベースとした単一ファクター戦略と、他のファクターへの意図せざるエクスポージャーを排除するよう設計された「改良型」単一ファクター戦略とを区別することです。一般的な単一ファクター戦略は、改良型ファクター戦略に比べ最適とは言えません。例えば、一般的なバリュー戦略の中には、そもそもバリュー・プレミアムへの十分なエクスポージャーを提供しないものさえあります。それ以外の一般的なバリュー戦略の中にはバリューへのエクスポージャーが高いものもありますが、そうした戦略は往々にして、バリュー以外のファクターへの大きな負のエクスポージャーを取ることでようやくそれを実現しているのです。

改良型単一ファクター戦略は、そのような欠点を克服しつつ、単一ファクターというパーツが持つ多くの利点をもたらします。例えば、バリュー戦略にモメンタムとクオリティ・ファクターへのエクスポージャーを加えることで、いわゆる「バリュー・トラップ(正当な理由があって安値に放置された銘柄)」を避けることができます。また、バリュー・ファクターをモメンタムやクオリティに加えることで、最も割高な銘柄を避けることにつながります。他のファクターは限定的に統合されるのみであり、主なリターンの源泉はあくまでも選択したファクタープレミアムです。このような「改良型」ファクター戦略はさらにマルチファクター戦略という器へと組み込むことが可能ですが、興味深いことに、ファクターを組み合わせてマルチファクター戦略を組み立てる手法を探る文献において、「改良型」ファクター戦略を徹底的な分析対象としているものは見当たりません。

より優れているのはどちらのアプローチか?

ボトムアップによる統合と単一ファクター戦略の組合せ-このいずれがより優れているかの研究において、Ghayur氏、 Heaney氏、 Platt氏(2016年)は、結局のところ、アセット・オーナーが持つ目的によって選好すべきアプローチは異なると主張しています。どちらのアプローチも有効な選択肢となり得るのです。

Leippold氏とRueegg氏(2017年)は、多様なファクターの組合せを考慮し、より長期間でしっかりとした統計上の検証を行ったうえで、統合されたポートフォリオは組合せによるポートフォリオをアウトパフォームはしないと結論付けています。統合アプローチでは、より効果的なポートフォリオ分散によりポートフォリオ全体のリスクを低下させると判明したものの、そのリスク低減はリターンの低下を伴っていました。実際に、2つのアプローチのリスクの違いは、統合アプローチが持つ、低リスク・アノマリーへのエクスポージャーの高さによって説明がつきます。両名の研究では、どちらか一方のアプローチが優位にあると言える証拠は見出されませんでした。

以上をまとめると、実証研究上では、統合アプローチと組合せアプローチに大きな差異はないように見えます。

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