成熟期に入ったクレジット市場のファクター投資

成熟期に入ったクレジット市場のファクター投資

25-10-2017 | インサイト

クレジット市場のファクター投資戦略が、投資家や研究者の大きな関心を集めています。この分野では、3つのトレンド - 関連する学術論文の増加、投資家の旺盛な需要、債券の「スマートベータ」ファンドの多様化 -がはっきりと表れています。

  • Patrick  Houweling
    Patrick
    Houweling
    Executive Director, Researcher & Portfolio Manager Quantitative Credits
  • Jeroen  van Zundert
    Jeroen
    van Zundert
    Researcher Quantitative Credits

要点

  • クレジット市場でファクター投資へシフトする傾向が高まっています。
  • ファクター投資戦略は、分散の手段、あるいはパッシブ運用の代替として捉えられています。
  • 投資家の間では、カスタマイズしたソリューションへのニーズが高まっています。

昨今では、多くの投資家の間で、ファクター投資やスマートベータ戦略を株式ポートフォリオに組み入れるアプローチが身近になっています。しかしながら、ファクターによってポートフォリオのリスク・リターン特性が改善できるのは株式だけではありません。ファクター投資は、社債市場をはじめとして、他の多くの市場にも適用可能なことが実証研究によって明らかとなっています。ロベコのクオンツ・リサーチャーでありQIグローバル・マルチファクター・クレジット戦略のポートフォリオ・マネジャーを務めるPatrick Houwelingは、「債券、なかでも投資適格社債とハイ・イールド債のスマートベータに関する学術論文、セミナー、商品や指数が数多く見られるようになってきました」と述べています。

Houwelingによれば、最近になるまで「クオンツ投資」がクレジットに目を向けなかった理由は「単純明白」です。定量的な実証研究を行うにはデータが必要ですが、個々の社債に関する過去のデータセットの入手は、長い間困難な状態だったからです。今日では、そのようなデータセットが広く入手可能となったことで、論文の発表数も飛躍的に増えています。「過去18ヵ月で発表されたクレジット市場のファクター投資に関する論文の数は、それまでの5年間に発表された数と同じでした」とHowelingは語っています。

「過去18ヵ月で発表されたクレジット市場のファクター投資に関する論文の数は、それまでの5年間に発表された数と同じでした。」

下のグラフでは、過去10年間で、クレジット市場における論文やブローカーのレポート発行数(ファクター別)が急増していることが分かります。

出所: ロベコ     

成長を続ける市場

記事やレポート数の増加という事象は、機関投資家の間で、いわゆる「スマートベータ」債券ファンドと呼ばれるものへの関心が急速に高まるのと並行して発生しています。これは、近年の多くの調査でも裏付けられています。インデックス・プロバイダーであるFTSEラッセルによる年次調査では、回答者の27%が既に債券のスマートベータに投資しているか、向こう18ヵ月以内での投資を検討していることが分かりました。Howeling は、「ファクター・クレジット戦略への関心は明らかに高まっています。過去2年半で、ロベコはこのテーマについて250回ものミーティングやプレゼンテーションを行ってきました」と話しています。

同様に、市場情報コンサルティング会社のスペンスジョンソンによる調査によると、欧州の回答者は、債券のファクター投資が年率19%成長すると予想しています。これは、全資産クラス中でも最も高い数値となっています。同社は、株式以外のスマートベータ商品の方が、株式の商品よりも需要の伸び率が高まると予想しています。2019年に欧州の投資家は「その他」資産クラスのスマートベータ商品に総額480億ユーロ投資すると予想されており、そのうち、420億ユーロが債券の戦略に投資されると見られています。

資産運用業界も、いわゆる「債券スマートベータ」に商機を見出しています。例えば、最近のフィナンシャル・タイムズ紙の記事によると、既に25のスマートベータ債券ETFが投資可能になっており、さらにもう25本が登録されようとしているとのことです。「次々と多くの債券スマートベータ商品が市場に出てきていることが、もう1つの大きなトレンドと言えます」とHowelingは述べています。

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3つのケーススタディ

ファクター投資戦略は、クレジット・ポートフォリオにいろいろな形でメリットをもたらします。様々な異なる事例について、実際のケーススタディを見てみることにより、多様な状況においてこの種の投資アプローチの効果が期待できることが分かるでしょう。これらのケーススタディにより、クレジット市場においてファクターを適用する意義に対する理解も深まります。

例えば、ある巨大な政府系ファンド(SWF)は、そのクレジット投資の大半をパッシブ・ポートフォリオで保有してきたものの、通常パッシブ戦略ではコスト控除後のパフォーマンスが市場を下回ってしまうため、代替を探していました。指数ベースのポートフォリオの場合、債務額が大きい企業への投資がより多くなることも、投資家にとっては懸念材料でした。ロベコのクオンツ・リサーチャーのJeroen van Zundertは、次のように語っています。「このお客様は、ファクター投資の、ルールに基づき透明性が高い運用プロセスが気に入っていました。従来のアクティブ運用に比べ、売買回転率や手数料が相対的に低い点もです。これまで、これらの項目は、パッシブ運用がアクティブ運用に比べて優位にあるという議論の根拠になっていました。」

同様に、イタリアのプライベートバンクは、パフォーマンスが振るわないアクティブ運用会社の入れ替えを検討していました。この銀行は、特色があり分散が効いたアルファをもたらす投資戦略を求めていました。同時に、実証に基づいた投資哲学を通じてアルファを達成したいとも考えていました。「ファクター投資は、実証に基づくアクティブ運用へのアプローチであり、この銀行にとって極めて自然な選択でした」とVan Zundertは述べています。

3番目の事例はオーストラリアの保険会社の例です。同社は、株式ポートフォリオでファクター投資を実践しており、それに続いて他の資産クラスでもファクターに基づくアプローチを模索していました。Van Zundertは次のように語っています。「このお客様は、クレジット・ファクター投資に魅力を感じていました。クレジット・ファクター投資を実証する証拠が積み上がり、投資商品の数も増加していたからです。今がクレジット・ポートフォリオにファクター投資を導入する適切な時期と判断されたのです。」

Houwelingによれば、これらの3つの事例は、投資家がクレジット市場でのファクター投資を選ぶ3つの大きな理由を示しています。1つ目は、既に従来のクレジット商品に投資している投資家による、スタイル分散としての活用です。定量的かつルールに基づく戦略は、異なる手法でアルファを生み出すという分散効果をもたらします。

2つ目としては、パッシブ運用を行う投資家にとって魅力的な代替となります。ファクター投資には、伝統的な時価総額加重型のベンチマークに付随する構造的な弱点や非効率性が無いからです。なおかつ、ファクター投資は、指数ベースのパッシブ運用同様に透明性が高く、売買回転率や手数料も相対的に低くなっています。そして3つ目は、お客様の複数の資産クラスのポートフォリオでファクター投資アプローチを実践する機会を提供できる点です。株式とクレジット双方にマルチファクター投資を適用することで、リスクを高めることなくリターンを向上させることができます。

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テーラーメイドの戦略

クレジット市場におけるファクター投資が成熟期を迎えつつある中で、アセット・オーナーは、いまや通常の既製の商品以上のソリューションを検討し始めています。HowelingとVan Zundertは、投資家がテーラーメイドのソリューションを求める事例が増加しつつあると明確に認識しています。例えば、投資ユニバース、ファクターの組み合わせ、あるいは売買回転率の水準に関し、お客様毎に固有のニーズを持っているかもしれません。また、特定のリスク上の制約やESG(環境・社会・ガバナンス)目標を持つお客様もいます。Van Zundertは「そのような場合、ロベコはカスタマイズしたソリューションを確実に提供します」と述べています。

顧客固有の戦略の要求に対応する方法として、1つには投資ユニバースの調整があります。「例えば、あるドイツの年金基金には金融セクターへのエクスポージャーを避けたいというニーズがあり、ロベコは金融を除いたソリューションを開発しました」とVan Zundertは語っています。もう1つのカスタマイズの事例としては、投資適格からハイ・イールドに格下げされた債券の取り扱い方に関するものがあります。多くの投資家は、投資適格債のポートフォリオでも多少のハイ・イールド債券の保有を許容していますが、中にはハイ・イールドへの投資を一切許容しないお客様もいます。また、例えばお客様の負債構造に合わせるといった理由のため、投資対象債券の残存期間に制限を設けるというカスタマイズもあります。

そのような投資ユニバースの調整のほかに、ファクター投資を他のコンセプトと組み合わせることも可能です。一例をあげると、英国のある年金基金は、ファクター投資を「バイ・アンド・メインテイン」アプローチに組み合わせたいと考えていました。バイ・アンド・メインテインとは、債券購入後、リスクが高まらない限り、満期までその債券を持ち切る戦略です。低リスクやクオリティというファクターの特性は、どの債券を購入し、(必要であれば)どの債券を売るかを決めるのに適しており、売買回転率を低くすることにもつながります。「このため、バイ・アンド・メインテイン戦略により適切なものになるよう、ファクターの組み合わせを調整することを提案しました」とVan Zundertは述べています。

「ファクター投資はルールに基づく手法であり、サステナビリティのルールを追加的に組み入れることは比較的容易です」

最後に、ファクター・ポートフォリオのサステナビリティ特性を改善することも、重要なカスタマイズの1つです。ある事例では、お客様が、ベンチマーク比で、ポートフォリオ内の二酸化炭素排出、水利用、エネルギー消費、廃棄物の発生の削減を希望していました。ファクター投資は元来ルールに基づく手法ですから、環境フットプリント削減や、他のESG側面からの追加ルールを組み入れることは比較的容易です。

徹底したリサーチが必要

多くの商品や関連論文が増えているのは確かですが、投資家は新しい戦略について常に批判的な眼で見るべきであるとHouwelingは述べています。「資産運用会社は、自ら徹底したリサーチを行う必要があります。クレジット市場でファクター戦略を実践に移し、社債の非流動性に的確に対応するためには、それは特に重要です。債券スマートベータ戦略のなかにも、より『スマート』なものとそうでないものがあると、ロベコでは考えています」と彼は警告しています。

ロベコは、クレジット市場で長年にわたりファクター投資の定量リサーチを行ってきたパイオニアです。1990年代末には、ファクターをベースとしたクレジットの銘柄選択に関するリサーチを開始し、2005年より社内でファクター・クレジット・ポートフォリオを運用してきました。また、2012年からは単独のファクター・クレジット戦略を提供しています。

HowelingとVan Zundertは、2014年に「Factor investing in the corporate bond market1(社債市場におけるファクター投資)」と題する論文を執筆しました。この分野初の学術研究となったこの論文で、ファクター投資はクレジット市場でも実践可能であると提起しました。2人は、1994年から2014年の調査期間において、マルチファクター・クレジット・ポートフォリオは魅力的なシャープ・レシオとインフォメーション・レシオを達成可能であったと結んでいます。後日この論文は、CFA Instituteの学術誌である、高名な『Financial Analyst Journal』誌に掲載されました。

ロベコでは、ファクターの社債への適用に関するリサーチに次いで、理論を実践に移し、2015年にロベコQIグローバル・マルチファクター・クレジット戦略を立ち上げました。これは、バリュー、モメンタム、低リスク、クオリティ、サイズのファクターにおけるスコアが高い投資適格社債に対するエクスポージャーを、グローバルに提供する戦略です。当戦略では、リサーチに基づく規律の取れた投資プロセスを用い、報われないリスクと不必要な売買を回避しながら、効率的にファクター・プレミアムを確保します。

その投資プロセスの中核をなすのは、ファクター特性によって債券をランキングする、ロベコの定量マルチファクターモデルです。この戦略は、クレジット・サイクルを通じて、長期的に市場を上回るパフォーマンスの達成を目指しています。これにより、負け組を避け、勝ち組を選別することが可能となります。

1「Factor Investing in the Corporate Bond Market(社債市場におけるファクター投資)」Patrick Houweling, Jeroen van Zundert共著(2017), Financial Analysts Journal, Vol.73, No.2.

重要事項

当資料は情報提供を目的として、Robeco Institutional Asset Management B.V.が作成した英文資料、もしくはその英文資料をロベコ・ジャパン株式会社が翻訳したものです。資料中の個別の金融商品の売買の勧誘や推奨等を目的とするものではありません。記載された情報は十分信頼できるものであると考えておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり、今後予告なしに変更されることがあります。運用状況、市場動向、意見等は、過去の一時点あるいは過去の一定期間についてのものであり、過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、記載された投資方針・戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません。当資料は法律、税務、会計面での助言の提供を意図するものではありません。

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