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SI Opener:鉱業はグリーン経済への移行に不可欠

SI Opener:鉱業はグリーン経済への移行に不可欠

27-08-2020 | SI Opener
鉱業は複雑な産業であり、しばしばサステナビリティに相反すると見なされます。実際に、鉱業は多くのサステナビリティ課題に直面しています。環境保護や水使用量の削減から、地域社会との良好な関係の維持、寿命を迎えた鉱山の後処理に至るまで、その課題は様々です。
  • Masja Zandbergen - Albers
    Masja
    Zandbergen - Albers
    Head of sustainability Integration
  • Cristina Cedillo Torres
    Cristina
    Cedillo Torres
    Engagement Specialist

要点

  • グリーンな未来の実現は、クリーンエネルギーに必要とされる鉱物資源に掛かっています。
  • 資産の更新に対する懸念を払拭するには、イノベーションが必要です。
  • その実現には、バリューチェーン全体を通じた連携が必要となります。

鉱物は(中には、その存在さえ知られていなかったものもありますが)、人類や文明の台頭と密接に結びついています。そしてグリーンな未来の実現は、そうした鉱物資源に掛かっているのです。以下のグラフが示すとおり、太陽光発電、風力発電、電気自動車(EV)、エネルギー効率の良い照明などのクリーンエネルギー技術を可能にするためには、多様な鉱物資源が不可欠となっています。これらのクリーンエネルギー技術は、ひいては、気候変動を引き起こす温室効果ガスの排出量削減につながります。

出所:Zepf V、Reller A、Rennie C、Ashfield M & Simmons J、BP (2014年):エネルギー産業に不可欠な天然資源

ロベコは、サステナブル投資においては白黒の区別は明白ではなく、近道や安直な答えも存在しないと考えます。また、サステナビリティについて広く受け入れられた一般論の中には、実際には間違いもあると確信しています。そのため、ロベコは、サステナブル投資の分野をリードしてきた実績を活かして、正しい理解を促進していきたいという思いを強くしています。

「SI Opener」シリーズにおいては、サステナブル投資と人間の進歩に関連する問題を取り上げ、新しい気付きとなるような内容をお届けします。ロベコは、このシリーズを通じて、サステナブル投資が複雑であり、正しい投資判断のためには十分な専門知識と経験が必要であることへの理解を広めていきたいと考えています。

EVは従来型自動車の4倍の金属や鉱物を使用

電気自動車(EV)への移行は、将来の金属需要を押し上げる大きな要因となるでしょう。EVの市場シェア30%(2030年までのEV販売台数3千万台に相当)という目標を達成するための、EVのサプライチェーン全体を通じた金属への追加的需要は、以下の数値にのぼると推計されています1

  1. 銅410万トン(2017年の供給量の18%)
  2. ニッケル110万トン(2017年の供給量の55%)
  3. コバルト31.4万トン(2017年の供給量の332%)

他のあまり知られていない希土類(レアアース)元素(REE)の中にも、風力発電やEVの必須要素となるものがあります。それらは永久磁石を使ってエネルギーを変換します。軽量で高出力の発電機やモーターが機能するうえで不可欠な要素となっています。その過程で使用されるレアアース化合物の1つには、ネオジム鉄ホウ素があります。

使用されるREEの総量は、適用方法や製造者によって異なります。風力発電では数百キログラム使用する場合がある一方、電動車両では1キログラムしか必要としない場合もあります。その使用量は大幅な増加を続けており、ある研究では、ビジネスが平常どおりに行われるシナリオにおいて、今後25年間にジスプロシウムとネオジムの需要がそれぞれ700%と2,600%増加する可能性があると予測しています2

海洋生物を犠牲にしたエネルギー転換?

こうした発展により多くのレアアース金属のコストが押し上げられ、その結果、海底採掘の事業採算性が向上しました。一部の海底地域は、コバルトや、ニッケル、その他の有用鉱物の埋蔵量が世界最大となっています。業界が長く待ち望んできた鉱業規制は、今年中にまとめられる予定です。これにより、国際海底区域の一部で割り当てられた「クレーム・エリア」を採掘する30年間の認可を契約業者が申請できるプロセスが導入されることになります。

しかし、科学者や自然保護活動家は、規制を導入すれば、事業者が深刻な環境被害を引き起こすのを防ぐ方法について十分な情報が得られる前に、業界が先行して採掘事業を始めてしまうことになるのではないかと懸念しています。現時点で存在する希少なデータからは、深海底採掘が海洋生物に壊滅的かつ不可逆的かもしれない影響を与えることが示唆されています3

これは、深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、予防的方策が適用されなければならないとする、「環境と開発に関するリオ宣言」の第15原則に明らかに反するものです。完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはなりません。また、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14(海の豊かさを守ろう)では、ターゲットの1つとして海洋・沿岸生態系の持続可能な管理と保護が求められています。

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イノベーション、イノベーション、イノベーション

一部の鉱物については、業界は、50年以上前に開発されたのと本質的に同一の鉱物処理技術(商業的価値のある鉱物を鉱石の中から選り分けるプロセス)を採用し続けており、最新科学による改善の余地は大きいといえます。

鉱業では一般的に、主に規模の拡大に依存したビジネスモデルをとってきました。大規模資産による採掘は、環境フットプリントや廃棄物の増大にもつながります。しかし、新しい鉱床の持続性は、等級の低さやその他の技術的課題などから限られてきており、鉱床へのアクセスも、政情不安、社会的反対運動や環境上の障壁による困難にさらされる可能性があります。

そのため、これらの懸念を緩和するのに役立つイノベーションが必要です。新しい分離技術の開発は、業界にとって大きな課題の1つとなっています。最新技術を適用することにより、化学物質、水、エネルギーの消費を最小限に抑えながら鉱物処理を改良することができます。

デロイト4によると、採掘企業は先端技術に高い関心を持ち始めています。急速に採用を進めるには至っていないものの、新しい方法を検討しているといいます。真の大変革をもたらす可能性がある、興味深い最新技術の例として、以下が挙げられます:

  • 現場で鉱物を抽出することができるバクテリアの利用
  • 金属浸出や排水で汚染された採掘現場を、天然酵素を使って浄化するバイオレメディエーション(微生物による環境修復)プロセス

比較的最近のことではありますが、ゲノミクスによるソリューションが、既に、汚染土壌のバイオレメディエーション、鉱山排水の改善、生物多様性に対する脅威のバイオモニタリングを通じた緩和などに利用されています。

必要不可欠な資源に付随する課題を解決するためには、再利用やリサイクルを推進することにより、そうした不可欠な金属の無駄を減らし、新たな採掘への需要を減らす一層の努力が必要となるでしょう。また、クリーンエネルギー技術のサプライチェーンにおいては、一部の金属の代替となる、レアアース元素のような物質を開発する研究開発の機会を追求することも求められます。

移行への投資

採掘企業は、低炭素経済への移行に合わせて自社の戦略的計画を方向転換させることに困難を感じています。既存の鉱業資産インフラへの投資継続の方が、脱工業化時代に対応した新しいイノベーションの追求よりも依然として選好されています。

しかしながら、サプライヤーから最終顧客に至るバリューチェーン全体を通した連携が必要なのです。さらに、大学、業界団体、研究機関との連携は、鉱業界のさらなるイノベーションのために不可欠です。

金融業界はこのプロセスの中で重要な役割を果たすことが可能です。化石燃料の利用をやめ、よりサステナブルな事業運営を目指す大手採掘企業の中には、資本コストを引き下げることができる企業もあるでしょう。さらに、投資対象から除外されるリスクも減らすことができます。ロベコでは、採掘事業者が直面する最も重要なサステナビリティ課題に、より適切な対応をとるとができれば、採掘事業者は解決策における重要な役割の担い手にもなれると確信しています。

1 出所: https://www.glencore.com/dam/jcr:ca562b57-b667-4321-93ad-dbb0953a165f/ev-a-disruptive-force-underpinning-our-commodities.pdf
2 出所: https://www.energy.gov/sites/prod/files/2015/12/f27/QTR2015-6F-Critical-Materials.pdf
3https://www.nature.com/articles/d41586-019-02242-y
4https://www2.deloitte.com/global/en/pages/energy-and-resources/articles/innovation-in-mining-series.html#america

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