ファクターを長期的に実証する証拠を見定める

ファクターを長期的に実証する証拠を見定める

28-06-2017 | インタビュー

ファクター・ティルトは重要でしょうか。また、ファクターの存在は、長期的に実証できるでしょうか。ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネス・スクールのエンドウメント・アセット・マネジメント・ニュートン・センター議長を務め、またロンドン・ビジネス・スクールの名誉教授であるElroy Dimson氏に、同分野における学術研究の現状、およびファクター投資やスマートベータ投資戦略への需要について話を伺いました。

要点

  • ファクターには、未だ実証研究の余地が大いにあります。
  • 投資家は、異なるリスクの源泉に対する自身のエクスポージャーを考慮する必要があります。
  • 今後も、市場においてファクター戦略の浸透がさらに進む余地が見込まれます。
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教授はご自身の研究で、株式リスクプレミアムの存在を示す有力な証拠を明らかにしています。ファクタープレミアムについても、同様に確信度の高い実証が可能とお考えですか。
「両者には違いがあると考えています。私がPaul Marsh氏、Mike Staunton氏と共同で実施した研究で、株式リスクプレミアムを正確に計測するのは困難であることが明らかになりました。それを考えれば、ファクタープレミアムの推計に、より大きな不正確性が伴うことはほぼ間違いないでしょう。私は、数多くのファクターにエクスポージャーを取ることが好ましいとは思いません。複数の市場、さまざまな調査期間を対象にした研究を通じて十分に実証されたプレミアムだけを検討対象とすべきだと考えています。」

投資家の間ではファクター投資の人気がますます高まっています。学術的に見て、十分な研究により検証済みであると思われますか。

「この分野には、未だ調査研究の余地が大いにあります。研究により、ファクタープレミアムは『サンプル外』では小さくなる傾向があることが分かっています。つまり、当初ファクターが発見されたデータとは別のデータで分析した場合、プレミアムは小さくなる傾向があるのです。この数年で、ファクターに関する当初の論文が公表された後、そのファクター戦略の多くについて、期待どおりのパフォーマンスとならないことを指摘する論文が複数発表されました。Campbell Harvey教授は、アメリカファイナンス学界の2017年の会長演説で『公表された研究結果の多くは、将来的に生き残り続けることができないだろう*』と述べています。」

最も強固と考えるファクタープレミアム、および最も疑わしいと考えるプレミアムは何でしょうか。

「仮に専門家2名をランダムに選び出し、最も意義があり最も興味深いファクターを5つ挙げるように尋ねれば、恐らく異なる答えが返ってくるでしょう。とはいえ、両者ともに共通して挙げるファクターもいくつかはあると考えられます。私が他の研究者と共同で執筆した最近の論文**では、5つのファクター、すなわち、サイズ、バリュー、インカムまたは利回り、ボラティリティ、モメンタムに絞って分析を行いました。何故これらを選んだのでしょうか。我々は、常に世界中のデータを長期にわたり調査分析するという研究姿勢を明確に保持しています。この姿勢を守ろうとすれば、分析対象となるデータの種類も自ずと限定されることになります。」

機関投資家に対し、伝統的な資産クラスだけでなく、ファクタープレミアムにも戦略的に資産を配分することを奨めますか。どの程度取り組むべきでしょうか。ファクターへのエクスポージャーのモニタリングのみに留めるべきでしょうか、それともより積極的にプレミアムを追求することを奨めますか。

「投資家毎の投資ホライズンやコストの制約にもよりますが、投資家は少なくともファクターへのエクスポージャーのモニタリングは行うべきだと考えます。これについて具体例を挙げましょう。以前私は、チャリティ基金の投資委員会のメンバーを務めていましたが、その基金はインカムを強く求めていました。そのチャリティ基金では、資金を食い潰してしまわないために、より多くのインカムが必要であることを運用会社に明確に伝えました。そのためその運用会社は、他の条件が同じであれば、より高利回りの証券を購入するように努めました。その結果、高配当株式のパフォーマンスが良い時にはファンドのパフォーマンスも良く、逆に悪い時にはファンドのパフォーマンスも振るいませんでした。この事例から、持続可能な支出水準に配慮するというシンプルな指針が加わるだけで、資産運用者は知らず知らずのうちに意図しないファクターへのエクスポージャーを持ってしまうことが分かります。私は、ファクター・ティルトは重要であり、運用会社もその顧客もその存在を知っておく必要があると考えます。先進的でクオンツ運用を重視するような投資家に留まらず、より標準的な投資家であっても、異なるリスクの源泉に対する自身のエクスポージャーを考慮し、それを評価する必要があります。」

現在のスマートベータに対する熱狂ぶりや、商品の乱立ぶりをどう見ていますか。

「ファクター投資は、しばしばスマートベータとも呼ばれ、運用業界を席巻しています。FTSEラッセルの年次スマートベータ調査についての一連の報告書でも、その影響の大きさが伺えます。2017年には回答者のほぼ4分の3が、スマートベータ・インデックス商品を導入済み、または検討中・検討予定と答えています。スマートベータ人気の高まりは一時的な流行、あるいはご指摘のように『熱狂』なのでしょうか。FTSEラッセルの調査によると、スマートベータ投資を採用した機関投資家の主目的はリターン向上とリスク削減です。また、アセット・オーナーはもう1つの重要な要素としてコスト削減をを挙げていますが、これは、スマートベータがアクティブ運用戦略の代替として認識される傾向が増していることを示しています。上場投資信託(ETF)などに投資する個人投資家は最新の流行を追う可能性が高く、機関投資家同様、個人投資家の間でも明らかにスマートベータは投資の趨勢となっています。しかし私は、少なくとも現状では、まだ本格的な熱狂という状況には達していないと考えています。依然として、ファクター投資商品を提供、販売する側、および購入する側にとって、ファクター戦略が資産運用市場への浸透をさらに進める余地が残っています」。

これは冊子「ロベコ・クォータリー(Robeco Quarterly)」に掲載された記事の抜粋です。全文は こちら(英文のみ)をご覧ください。

* C. Harvey, 「金融経済の科学的見通し(The scientific outlook of financial economics)」, デュークI&Eリサーチ・ペーパーNo.2017-05

**E. Dimson, P. March & M. Staunton, 「ファクターに基づく投資:長期的根拠(Factor based investing: The long term evidence)」, ジャーナル・オブ・ポートフォリオ・マネジメント(2017年), Vol 43, No.5, pag. 15-37

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