Robeco, The Investments Engineers
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27-06-2016 · リサーチ

ESG統合:株式のファンダメンタルズ分析にESG評価を直接組み込むアプローチ

ロベコのグローバル株式運用チームでサステナビリティおよびバリュエーション・スペシャリストを務めるWillem Schramadeは、先頃、運用プロセスへのESG統合に関する記事を「ジャーナル・オブ・サステナブル・ファイナンス&インベストメント」で発表しました。この中で、ロベコのグローバル株式運用チームが実践するESG統合の先進的な手法について説明しています。

環境、社会、ガバナンス(ESG)課題の真の意味での統合とは、ESG要素が企業価値評価モデルや、アナリストやポートフォリオ・マネージャーの投資判断プロセスに、体系的に組み込まれていることを意味します。しかしながら、多くの運用会社におけるESGへのアプローチは、そのような真の統合をなし得ていません。その結果、サステナブル投資は、運用への適用よりも、マーケティング手段としての成功が先行しがちな分野となっています。

ロベコにおけるバリュー・ドライバー・アジャストメントという手法は、それとは異なります。事業モデルや業界内での競争力という観点から、ESG評価と株式価値との関連を見極め、従来の株式ファンダメンタルズ分析手法に融合させています。

バリュー・ドライバー・アジャストメント(VDA)手法

アナリストは、まず各業種や企業にとって最も重要なESG課題を特定します。次に、企業がそれらの課題にどう対応しているか、指標、ポリシー、戦略などに基づき、同業他社との比較で評価します。その後、企業にとってその重要課題に起因する競争上の優位性(または不利益)があるか、また、それが株式価値に与える影響を判断します。

この関連性を統計的に立証したり、アルゴリズムにおいて捉えるのは容易ではありませんが、確かに存在するはずのものです。直感的には捉えられるのではないでしょうか。ある企業が、ESG課題に起因する競争力を持っている場合、それは株式価値として顕在化するはずです。つまり、最終的には、売上成長率の向上、利益率の上昇、資本効率の改善、リスク低減などにつながるはずです。こうした株式価値は、ひいては企業の投下資本利益率やバリュエーションの向上をもたらします。

2014年1月以降、ロベコは、ESGの最重要課題が株式価値に及ぼす影響について、ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)分析の中で明確に数値化するようアナリストに求めています。その結果として、ESG分析が目標株価に及ぼす影響の平均値を体系的に算出できるようになりました。さらには、ESG課題の中で何が最も重要かを特定することも可能になりました。ロベコのグローバル株式運用チームは、ESG要素は株式のバリュエーションに影響を及ぼすという確固たる信念の下、こうした取り組みを行っています。当チームは、その関連性を数値化するにあたり、ロベコSAMが実施するコーポレート・サステナビリティ評価(CSA)から得られる広範にわたる質の高いデータを活用できるという、ロベコSAMのグループ会社ならではの利点も有しています。CSAは、毎年約3,000社に宛てて送付される調査票への回答に基づいて実施されます。CSAを活用することにより、今後も当チームは、ESGの各要素の重要性を明らかにしていくことができるでしょう。

2014年から2015年2月までの期間で、グローバル株式運用チームは、VDAの枠組みに則り、127件の投資に向けた分析を実施しました。この第一段階における分析結果では、ESG要素が目標株価に及ぼす影響の平均値は5%となりました。言い換えれば、アナリストが到達した目標株価のうち、ESG要素に起因して導き出された部分は平均で5%(調整を行わなかったケースを除けば10%)に該当します。ただし、目標株価がこの調整によって変動した幅は-23%から+71%までにわたり、ばらつきが大きいことには注意が必要です。

投資判断の質の向上

サステナビリティだけに起因するアルファを抜き出して示すことはほぼ不可能です。ESG分析は、戦略分析や価値評価モデルを適用した分析といった他のファンダメンタルズ分析と同様に、運用プロセスに統合されているものであり、他の分析を分離できないようにESG分析だけを分離することはできません。しかしながら、ESG統合が我々の投資判断の質を向上させる効果は表れてきています。

まず第一に、ESGを統合することは、より長期的な視点に注目することにつながります。ロベコのアナリストとポートフォリオ・マネージャーは企業の長期的な価値創出の可能性について、より深く掘り下げた議論を交わすようになりました。また、我々がどのような特徴、どのような無形資産を追求するのかをより明確にすることができました。次に、ESG統合は、警告のシグナルももたらしてくれます。ESG要素は概して長期的な性質を持ちますが、時には驚くほどすぐに効果を表すことがあります。例えば、へルスケア担当のサステナビリティ・アナリストが、ある日本の製薬会社に対してコーポレートガバナンスのリスクが高い企業だというフラグを立てた翌四半期に、同社は割高な買収を行いました。同様に、ある米国の企業では、資本財担当のサステナビリティ・アナリストが指摘したリスクに関連した経費が上昇しました。

詳細については、SSRNサイトに掲載されたWillem Schramadeの論文  ‘Integrating ESG into valuation models and investment decisions: the value-driver adjustment approach’ (評価モデルと投資判断へのESG統合:バリュー・ドライバ-・アジャストメント手法)’ (英文)を参照ください。

当記事は、Taylor & Francisオンライン のJournal of Sustainable Finance & Investment 2016, Vol. 6, NO.2, 95-111において発表されたものの翻訳です。 .

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