ESG統合:株式のファンダメンタルズ分析にESG評価を直接組み込むアプローチ

ESG統合:株式のファンダメンタルズ分析にESG評価を直接組み込むアプローチ

19-07-2016 | リサーチ

ロベコのグローバル株式運用チームでサステナビリティおよびバリュエーション・スペシャリストを務めるWillem Schramadeは、先頃、運用プロセスへのESG統合に関する記事を「ジャーナル・オブ・サステナブル・ファイナンス&インベストメント」で発表しました。この中で、ロベコのグローバル株式運用チームが実践するESG統合の先進的な手法について説明しています。

  • Willem  Schramade
    Willem
    Schramade
    Sustainability & Valuation specialist

要約:

  • 真の意味でESG統合を実践している運用会社は非常に稀です。
  • ロベコの手法では、ESG評価が株式ファンダメンタルズ分析に及ぼす影響を明確にします。
  • 初期段階の分析結果によれば、ESG要素が目標株価に及ぼす影響は平均で5%でした。

環境、社会、ガバナンス(ESG)課題の真の意味での統合とは、ESG要素が企業価値評価モデルや、アナリストやポートフォリオ・マネージャーの投資判断プロセスに、体系的に組み込まれていることを意味します。しかしながら、多くの運用会社におけるESGへのアプローチは、そのような真の統合をなし得ていません。その結果、サステナブル投資は、運用への適用よりも、マーケティング手段としての成功が先行しがちな分野となっています。

ロベコにおけるバリュー・ドライバー・アジャストメントという手法は、それとは異なります。事業モデルや業界内での競争力という観点から、ESG評価と株式価値との関連を見極め、従来の株式ファンダメンタルズ分析手法に融合させています。

サステナビリティに関する最新の「インサイト」を読む
サステナビリティに関する最新の「インサイト」を読む
配信登録

バリュー・ドライバー・アジャストメント(VDA)手法

アナリストは、まず各業種や企業にとって最も重要なESG課題を特定します。次に、企業がそれらの課題にどう対応しているか、指標、ポリシー、戦略などに基づき、同業他社との比較で評価します。その後、企業にとってその重要課題に起因する競争上の優位性(または不利益)があるか、また、それが株式価値に与える影響を判断します。

この関連性を統計的に立証したり、アルゴリズムにおいて捉えるのは容易ではありませんが、確かに存在するはずのものです。直感的には捉えられるのではないでしょうか。ある企業が、ESG課題に起因する競争力を持っている場合、それは株式価値として顕在化するはずです。つまり、最終的には、売上成長率の向上、利益率の上昇、資本効率の改善、リスク低減などにつながるはずです。こうした株式価値は、ひいては企業の投下資本利益率やバリュエーションの向上をもたらします。

2014年1月以降、ロベコは、ESGの最重要課題が株式価値に及ぼす影響について、ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)分析の中で明確に数値化するようアナリストに求めています。その結果として、ESG分析が目標株価に及ぼす影響の平均値を体系的に算出できるようになりました。さらには、ESG課題の中で何が最も重要かを特定することも可能になりました。ロベコのグローバル株式運用チームは、ESG要素は株式のバリュエーションに影響を及ぼすという確固たる信念の下、こうした取り組みを行っています。当チームは、その関連性を数値化するにあたり、ロベコSAMが実施するコーポレート・サステナビリティ評価(CSA)から得られる広範にわたる質の高いデータを活用できるという、ロベコSAMのグループ会社ならではの利点も有しています。CSAは、毎年約3,000社に宛てて送付される調査票への回答に基づいて実施されます。CSAを活用することにより、今後も当チームは、ESGの各要素の重要性を明らかにしていくことができるでしょう。

2014年から2015年2月までの期間で、グローバル株式運用チームは、VDAの枠組みに則り、127件の投資に向けた分析を実施しました。この第一段階における分析結果では、ESG要素が目標株価に及ぼす影響の平均値は5%となりました。言い換えれば、アナリストが到達した目標株価のうち、ESG要素に起因して導き出された部分は平均で5%(調整を行わなかったケースを除けば10%)に該当します。ただし、目標株価がこの調整によって変動した幅は-23%から+71%までにわたり、ばらつきが大きいことには注意が必要です。

投資判断の質の向上

サステナビリティだけに起因するアルファを抜き出して示すことはほぼ不可能です。ESG分析は、戦略分析や価値評価モデルを適用した分析といった他のファンダメンタルズ分析と同様に、運用プロセスに統合されているものであり、他の分析を分離できないようにESG分析だけを分離することはできません。しかしながら、ESG統合が我々の投資判断の質を向上させる効果は表れてきています。

まず第一に、ESGを統合することは、より長期的な視点に注目することにつながります。ロベコのアナリストとポートフォリオ・マネージャーは企業の長期的な価値創出の可能性について、より深く掘り下げた議論を交わすようになりました。また、我々がどのような特徴、どのような無形資産を追求するのかをより明確にすることができました。次に、ESG統合は、警告のシグナルももたらしてくれます。ESG要素は概して長期的な性質を持ちますが、時には驚くほどすぐに効果を表すことがあります。例えば、へルスケア担当のサステナビリティ・アナリストが、ある日本の製薬会社に対してコーポレートガバナンスのリスクが高い企業だというフラグを立てた翌四半期に、同社は割高な買収を行いました。同様に、ある米国の企業では、資本財担当のサステナビリティ・アナリストが指摘したリスクに関連した経費が上昇しました。

詳細については、SSRNサイトに掲載されたWillem Schramadeの論文  ‘Integrating ESG into valuation models and investment decisions: the value-driver adjustment approach’ (評価モデルと投資判断へのESG統合:バリュー・ドライバ-・アジャストメント手法)’ (英文)を参照ください。

当記事は、Taylor & Francisオンライン のJournal of Sustainable Finance & Investment 2016, Vol. 6, NO.2, 95-111において発表されたものの翻訳です。 .

重要事項

当資料は情報提供を目的として、Robeco Institutional Asset Management B.V.が作成した英文資料、もしくはその英文資料をロベコ・ジャパン株式会社が翻訳したものです。資料中の個別の金融商品の売買の勧誘や推奨等を目的とするものではありません。記載された情報は十分信頼できるものであると考えておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり、今後予告なしに変更されることがあります。運用状況、市場動向、意見等は、過去の一時点あるいは過去の一定期間についてのものであり、過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、記載された投資方針・戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません。当資料は法律、税務、会計面での助言の提供を意図するものではありません。

ご契約に際しては、必要に応じ専門家にご相談の上、最終的なご判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。

運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況による信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動の影響も受けます。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、投資元本を上回る損失を被ることがあります。弊社が行う金融商品取引業に係る手数料または報酬は、締結される契約の種類や契約資産額により異なるため、当資料において記載せず別途ご提示させて頂く場合があります。具体的な手数料または報酬の金額・計算方法につきましては弊社担当者へお問合せください。

当資料及び記載されている情報、商品に関する権利は弊社に帰属します。したがって、弊社の書面による同意なくしてその全部もしくは一部を複製またはその他の方法で配布することはご遠慮ください。

商号等: ロベコ・ジャパン株式会社  金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2780号

加入協会: 一般社団法人 日本投資顧問業協会

本記事に関連するテーマ: