統合報告:単なるチェックリストの確認を超えた取り組み

統合報告:単なるチェックリストの確認を超えた取り組み

29-03-2016 | インサイト

近年、財務情報とサステナビリティ情報を組み合わせた統合報告を、対応すべき課題として挙げる企業が増えています。このこと自体は正しい方向への第一歩とといえますが、統合報告の導入は最終目標ではなく、あくまでも意義のある報告を行うための手段にすぎない、と金融アナリストのJohan van der Lugtとエンゲージメント・スペシャリストのDaniëlle Essinkは述べています。

  • Daniëlle Essink
    Daniëlle
    Essink
    Senior engagement specialist
  • Johan  van der Lugt
    Johan
    van der Lugt
    Investment Analyst Global Equities

要旨:

  • サステナビリティ関連データと財務情報を、意義のある形で1つの報告書に統合することが必要
  • 企業は、サステナビリティのデータを企業の戦略や財務的成果に結びつけるべき
  • トップ企業は、サステナビリティを事業成功のための主要な要素と位置づけ、取り入れている

ロベコのエンゲージメント・スペシャリストであるDaniëlle Essinkと、グローバル株式チームの金融アナリストであるJohan van der Lugtによれば、企業は、現在別々に公表している2種類の情報、すなわちCSR報告書におけるサステナビリティ関連データと年次報告書(アニュアルレポート)の財務情報を、包括的で意義のある1つの報告書に統合する必要があります。Essinkは次のように語っています。「多くのCSR報告書は、金融アナリストにとっての共通言語では記載されておらず、一方で年次報告書は財務データのみを提供しています。ロベコでは、企業のビジネスモデルにおけるリスクと機会を分析する際、サステナビリティのスペシャリストと金融アナリストが協働する場面が非常に増えています。というのも、この2種類の情報は無関係ではなく、相互に影響し合っているからです。企業には、これらの情報を統合し、その相互の関連を示すことが求められます。」

多くの企業が国連グローバル・コンパクトに署名し、サステナビリティの指標に従ってデータを開示し、IR(投資家向け広報)部門にサステナビリティのスペシャリストを採用していますが、現時点ではこれが企業の取り組みのほぼ全てです。しかし、Van der Lugtによれば、これは単なる出発点にすぎません。「企業は、サステナビリティ関連情報を、透明性が高く比較可能な形で、投資家が容易に入手できるような方法で提供する必要があります。また統合報告書は、統合された考え方を反映したものでなければなりません。つまり、従来のサステナビリティ関連データを、企業の戦略や財務的成果に結びつける必要があるのです。」

Van der Lugtはさらに次のように続けています。「我々は、投資家として、ならびに財務報告書とサステナビリティ報告書の利用者として、さまざまな指標が高度に標準化され、統合されることを望んでいます。報告書では、財務上重要なサステナビリティ課題に関する定量的情報を示す必要があります。サステナビリティ課題が企業にとって財務的に真に重要な場合、つまり、企業の長期的な競争力や収益性に大きな影響を及ぼす可能性がある場合、この情報を年次報告書で開示しないというのは理にかなっていません。」

「統合報告書は、統合された考え方を反映したものでなければなりません」

報告書では、財務上重要なサステナビリティ情報を示すだけでなく、企業にとって財務上重要な要素であると定義するに至った根拠を示さなければなりません。Van der Lugtは次のようにコメントしています。「財務上の重要性について考え報告するプロセスは、常に変化していくプロセスであるべきです。すなわち、我々は投資家として、財務上重要な要素について、長期にわたる相対的な重要性を理解したいと考えているのです。」

サステナビリティに関する最新の「インサイト」を読む
サステナビリティに関する最新の「インサイト」を読む
配信登録

リスク以外にも注目

さらにEssinkは次のように加えています。「財務上重要な要素について検討する際、企業はリスクのみに注目する傾向があります。その結果、サステナビリティの統合がもたらし得る機会を逃してしまうのです。一方、投資家は、長期的な利益機会を捉えるための戦略を確立している企業を好みます。その好例として、ヒューレット・パッカードが挙げられます。同社は、エネルギー効率が高いプリンターを少数保有するだけで業務を遂行できるように顧客を支援し、それによって差別化に成功しています。ここでは、サステナビリティとビジネスの利害が一致しているのです。」

Van der Lugtも同様の見解を示しています。「サステナビリティ要素の財務的重要性を見極めることは、単なる第一歩にすぎません。企業は、国際統合報告審議会(IIRC)が定義する6つの異なる資本(知的資本、製造資本、人的資本、自然資本、社会・関係資本、財務資本)に投資することでどのように価値を創造できるか、さらに、価値創造が成長(収入)、収益性(費用)、資本効率、リスク特性などの財務状況にどのような影響をもたらすかについて、しっかりとした見通しを持つべきです。価値創造に寄与する資本への投資が十分でないと、企業の収益力の持続性は危機にさらされることになります。投資家にとって、企業がこういった課題をどの程度しっかりと管理しているかを理解するのは重要なことです。ロベコでは、企業やその経営陣と会う機会においては、常にこれを議題に挙げて議論します。今後も、企業とこの観点から継続的に協議する機会を持っていきたいと考えます。」

報告の落とし穴

さらにVan der Lugtは次のように述べています。「我々投資家にとって、企業が統合報告の落とし穴(多くの場合経営陣や中枢部による誘導により、統合報告書の発行自体が最終目標になってしまうこと)に陥っていないか、またサステナビリティの考え方が真の意味で組織全体に浸透しているかを判断することはとても重要です。後者は、すなわち、サステナビリティがバランス・スコアカードや主要業績評価指標(KPI)に組み入れられ、企業の最終的な財務目標(例えば、自己資本利益率(ROE)15%以上達成など)にも結びついていることを意味します。」

「投資家は、非の打ちどころのない筋書きを求めているのではなく、バランスのとれた見方、およびKPIや価値創造との統合を求めているのです。我々は、財務上重要な要素や、それを異なる資本と結びつけることと、企業の(長期的な奨励給制度に組み込まれている)主要財務目標との間の隔たりを埋めるには、さらなる取り組みが必要だと感じています。まさにこうした点を企業と議論したいのです。」

Essinkはさらに続けています。「この観点から、我々は、行き過ぎた標準化にもリスクがあると案じています。1つの型が全てのものに当てはまるものではありません。各企業の報告書が一定の形で比較可能であることは必要ですが、同時に、報告書はその企業固有の課題に適応したものでなければなりません。従って、統合報告は最終目標ではなく、あくまでも意義のある報告をするための手段にすぎないのです。」

進捗状況

Van der LugtとEssinkによると、事業運営にサステナビリティを組み入れる企業は着実に増えています。Van der Lugtは次のように述べています。「トップ企業は、サステナビリティを独立した分野として管理するビジネスモデルから、サステナビリティを事業成功の主要な要素と位置づけて取り入れるビジネスモデルに移行しつつあります。異なる資本について、またそれがもたらす重大な影響について、より進歩的な報告を行う企業は、そうした報告が進んでいない同業他社よりも、ROEを持続的に生み出す可能性がより高いと考えます。」

Essinkは次のような認識を示しました。「南アフリカはこの分野のパイオニアです。2010年には既に、『コンプライ・オア・エクスプレイン(原則に従うか、そうでなければ従わない理由を説明するか)』をベースとした統合報告を導入しています。欧州でも導入が進む一方、米国企業は、一般に他の地域よりもはるかに後れをとっています。特に、年次報告書に重要なサステナビリティ情報を示すという点で、他の地域よりも立ち遅れています。この原因は、極度に標準化された証券取引委員会(SEC)の報告要件にあると考えられます。SECの要件に従うと、企業には、サステナビリティ・データを年次報告書に盛り込むための調整を行う余地がほとんどないのです。」

行く先には?

Essinkは次のように結論づけています。「数年以内に私のような職業は失業するというのが理想的な姿です。それは、企業や金融アナリストがサステナビリティ課題に対応するのが当然という状況になっているということです。次の段階としては、企業とサステナビリティ・スペシャリストの間で、より戦略的で統合化された議論が行われるべきでしょう。サステナビリティへの取り組みと企業戦略やビジネスモデルを相互に統合して結びつけることにより、企業は次の段階へと推し進めることができるのです。」

重要事項

当資料は情報提供を目的として、Robeco Institutional Asset Management B.V.が作成した英文資料、もしくはその英文資料をロベコ・ジャパン株式会社が翻訳したものです。資料中の個別の金融商品の売買の勧誘や推奨等を目的とするものではありません。記載された情報は十分信頼できるものであると考えておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり、今後予告なしに変更されることがあります。運用状況、市場動向、意見等は、過去の一時点あるいは過去の一定期間についてのものであり、過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、記載された投資方針・戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません。当資料は法律、税務、会計面での助言の提供を意図するものではありません。

ご契約に際しては、必要に応じ専門家にご相談の上、最終的なご判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。

運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況による信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動の影響も受けます。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、投資元本を上回る損失を被ることがあります。弊社が行う金融商品取引業に係る手数料または報酬は、締結される契約の種類や契約資産額により異なるため、当資料において記載せず別途ご提示させて頂く場合があります。具体的な手数料または報酬の金額・計算方法につきましては弊社担当者へお問合せください。

当資料及び記載されている情報、商品に関する権利は弊社に帰属します。したがって、弊社の書面による同意なくしてその全部もしくは一部を複製またはその他の方法で配布することはご遠慮ください。

商号等: ロベコ・ジャパン株式会社  金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2780号

加入協会: 一般社団法人 日本投資顧問業協会