サステナブル投資:知っておくべき12項目

サステナブル投資:知っておくべき12項目

25-05-2016 | インサイト

サステナブル投資には多岐にわたるコンセプトやアプローチがあり、混乱を招きやすい分野といえます。ここでは、アセット・オーナーの皆様がご自身にあったサステナブル投資に辿りつくために、考慮すべき12項目について説明いたします。

  • Willem  Schramade
    Willem
    Schramade
    Sustainability & Valuation specialist

要約:

  • サステナブル投資は多岐にわたり、その領域は倫理、レーティング評価、リスクの管理にとどまりません。
  • 環境・社会・ガバナンス(ESG)要素の通常の運用への統合は容易ではありませんが、得られる効果も非常に大きくなります。
  • その一方で、本格的なサステナブル投資のアプローチは、いまだ主流となっていません。

1: サステナブル投資は非常に多岐にわたる

投資全般にもいえることですが、サステナブル投資には多岐にわたる分野が存在し、その動機、アプローチ、得られる結果も様々です。サステナブル投資を始める動機は、倫理目的からテーマ投資、(通常ESG統合を通じた)分析の質の向上という理由まで様々です。また、同じ運用会社内であっても、投資の動機が異なればアプローチも異なることになり、各チームがそれぞれの投資哲学やプロセスに従って、独自のサステナブル投資のアプローチを取ります。一般的に、サステナビリティは非常に幅広い意味を持つコンセプトであり、そのセグメントとしてのE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の各領域とも多くの課題を包含しています。

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2: サステナブル投資は倫理と同義ではない

サステナブル投資は往々にして倫理投資と同義だと捉えられがちです。倫理投資とは、リターンよりも倫理的成果を優先するものです。しかしながら、大部分のサステナブル投資戦略はそうしたものではありません。もちろん、最低限の倫理的基準は考慮しますが、通常、企業の倫理水準の向上は本来の目的ではなく、副産物に過ぎません。むしろ、ESGが統合された運用戦略では、変化を遂げ続ける世界にうまく対応し(トップダウン)、企業のリスクを、財務指標だけに頼るよりも正確に評価する(ボトムアップ)ことを目指しています。

3: サステナブル投資とは、投資除外や、投資ユニバースを狭めることを意味するものではない

サステナブル投資の一部には、数多くの企業を投資ユニバースから除外するものもありますが、それは投資機会を狭め、リターンを生む可能性を低下させることにつながります(項目4参照)。もちろん、そのような戦略を取ることは自由です。しかしながら、大部分のESG要素を統合したファンドや運用会社は、投資対象から除外するよりも、むしろエンゲージメント(積極的関与)を行うという選択肢を選びます。こうした投資戦略においては、投資対象除外リストに載る銘柄数は少なく(最大でも数十銘柄程度)、パフォーマンスにマイナス影響をもたらすこともありません。

4: サステナブル投資はパフォーマンスを犠牲にするものではなく、むしろリターンの源泉となる

実際のところ、倫理投資やインパクト投資という分野を中心とした一部のファンドは、社会的成果のために投資リターンを犠牲にしています。HongとKacperczykが2009年に発表した有名な論文では、煙草、ギャンブル、酒類等の「有害な」企業の株価がアウトパフォームしていることが示されています。しかしながら、ESG統合がパフォーマンスを犠牲にするものでないことは明らかです。実際、ESG要素を統合する目的は、リスクを抑えて機会を追求し、リスク調整後リターンの向上を図ることなのです。

Derwallらは2011年に、社会的価値重視の(倫理的)戦略が主要な投資戦略をアンダーパフォームしている一方で、利益志向のサステナブル投資戦略(ESGデータに基づいてより優れた投資判断を目指す戦略)は、主要な投資戦略をアウトパフォームしていることを発表しています。実際、財務情報からは十分に把握できない情報がESGデータに含まれていることを示す、かなり多くの学術的証拠も存在しています。

5: サステナブル投資は受託者責任に相反するものではない

これは、前項にも関連する事項です。サステナブル投資戦略は社会的成果のために運用パフォーマンスを犠牲にしているという見方から、受託者責任にも反するとみなされがちです。しかしながら、大部分のサステナブル投資戦略は、社会的成果を得るために運用パフォーマンスを犠牲にすることはありません。

6: 全てのサステナビリティ関連課題が重要なわけではない

企業のサステナビリティを評価する際には数百もの評価基準があり、危険信号を回避するためには多くの要素を精査する必要があります。しかし、今後の事業モデル、ひいては株価を左右する可能性が高い重要な要素はわずかしかありません。これらの重要課題は、業種によって異なるばかりでなく、同業種内でも異なります。Khanらが2015年にハーバード・ビジネス・スクールで発表した論文によると、最も重要なESG要素において優れた取り組み実績をあげている企業の株価はアウトパフォームしています。逆に、重要でない要素における評価が高い企業の株価は、実際のところアンダーパフォームしていることが明らかになりました。この論文の著者は、数十もの最重要課題を業種別に特定しましたが、この数をさらに絞り込めば、こうした傾向がさらに顕著に現れる結果となるでしょう。

重要性(マテリアリティ)を見極めることの意義は、いかに強調してもし足りません。これが、投資アナリストとサステナビリティ・アナリストの間に生まれる誤解の中心となっています。サステナビリティ・アナリストが投資ニーズを理解せず、企業に関する入手可能なサステナビリティ・データ全てを投資アナリストにぶつけて論破しようとする状況は頻繁にみられます。投資アナリストにとってはそのサステナビリティ・データの大部分が役に立たないことが判明し、その結果、投資アナリストがサステナビリティ・データ全般に対して懐疑的になってしまう場合もあります。

7: レーティング評価はサステナブル投資の出発点に過ぎない

サステナブル投資の評価機関の主な役割は、サステナブル投資データを収集、集約して投資家に提供することにあります。それらは、スクリーニングやクオンツ戦略といった目的には非常に有益な情報です。しかしながら、前述の重要性(マテリアリティ)を無視して、一般的な方法で要素の加重を行うなど、レーティング評価にも限界があります。その結果、完全に誤った結論となっている場合もあります。従って、本格的なファンダメンタルズ分析を行うアナリストであれば、レーティング評価は分析プロセスの終盤ではなく、あくまでも出発点として使用すべきといえます。

8: サステナブル投資 は下落リスクの管理、投資機会の見極めの両面で有用

サステナビリティ分野に優れた企業は財務リスクも低い傾向にあることは、既に広く認識され受け入れられています。加えて、こうした特性は、経営の質の保証にもなると考えてよいかもしれません。しかし、多くの人はそこで考えを止めてしまい、一般的には、サステナビリティはリスク低減要因とだけみなされているようです。これは残念な話です。なぜならサステナビリティ要素は投資機会にも直結するものであり、企業は最も重要なサステナビリティ要素、すなわち資本コストだけではなく事業キャッシュフローにも影響を及ぼすような要素から、競争上優位な面、不利な面を導き出すことができます。例えば、優れた人的資本やイノベーションにより同業他社を上回るスピードで成長している製薬会社や、現地の利害関係への優れた対応により、コストを低く抑えている鉱業会社などはその好例です。

9: ESG統合は困難であるが、得られる効果も大きい

明確にしておきたい点が一つあります。それは、本格的なESG統合を達成するには、通常数年を要するということです。当社では2009年に着手しましたが、アナリストに受け入れられるようになるには2013年までかかりました。この理由は単純明快です。アナリストのこれまでの行動を変えさせるのは容易なことではなく、また、ESG分析の付加価値が実際に示されて初めて、アナリストもそれを活用するようになるからです。さらには、そこから定義(何がESGで、何が違うのか)についての議論が始まり、実際にどのように統合を行えばよいかという疑問に直面することになります。ESG情報の統合が、確実に、有意義かつ一貫性を持ったやり方で投資判断につながるようにするためには、どうすればよいのでしょうか。その答えはチームや投資プロセスにより異なるでしょうが、いずれの場合でも、規律あるアプローチと強固な枠組みが必要となります。

喜ぶべきことに、こうした困難な作業には、それに十分見合う投資判断の質向上という効果が伴います。当社では、ESG統合がリスクや投資機会、事業モデルの理解を深めることにつながり、それにより、大きな損失につながりかねない間違いを回避し、過小評価された投資機会を見極めることが可能となっています。

10: サステナビリティは評価モデルに反映可能

サステナビリティを数値化しようとしても非常に主観的なものになり、測定するのは不可能、もしくは既に潜在的にモデルに織り込まれている、という声がアナリストから多く聞かれます。これは安直な考え方であり、実質的にサステナビリティの影響をゼロとみなしていることになります。そして、サステナビリティが意思決定に影響を及ぼさないことになります。これは受け入れがたいことです。もちろん、データは完璧ではありませんが、こうした考えの人は、単にサステナビリティの定量化への取り組みが十分でない、または定量化しようという意欲に欠けているのではないかと感じます。従って、当社では、アナリストが投資に向けた論拠を形成する際には、価値の源泉に対してESGが競争力の面からもたらす影響を明確に定量化するよう義務付けています。KPMGやアーンスト・アンド・ヤングなどのコンサルティング会社はさらに一歩進んで、ESG課題の社会的影響をも定量化しています。また、主観性について論じるのであれば、アナリストがモデルに盛り込むその他の予想も、主観的なものではないでしょうか。

11:サステナブル投資は単なるマーケティングの道具ではない

サステナブル投資の合理性について懐疑的にみる人は多く、誤った理想主義、または知識が乏しい顧客を惹きつけるためのマーケティングの道具ではないかとの疑いを持たれがちです。実際、それが当てはまるケースもあるかもしれません。しかしながら、サステナブル投資は実体を伴ったものです。サステナブル投資のアプローチがパフォーマンスの向上をもたらすと信じるに足る強固な論理的根拠(およびいくつかの学術的証拠)は存在し、それが利益志向のサステナブル投資ファンドの裏付けとなっています。一方で、どっちつかずのケースもあります。一部の資産運用会社では数十人のESGアナリストを抱え、(マーケティングの道具としての域を超えて)銘柄が投資ユニバースとしてふさわしいかどうかの判断は行っているものの、投資アナリストやポートフォリオ・マネジャーが実際にサステナビリティ情報を考慮に入れるには至っていない(統合されていない)ようなケースもみられます。

12: サステナブル投資への注目は高まるが、「主流」への道のりは遠い

投資戦略に「サステナビリティ」という名を冠するのは容易であり、欧州の一部では主流になりつつあるといえるかもしれません。しかしながら、本格的なサステナブル投資のアプローチは決して主流にはなっていません。世界でも欧州以外のほとんどの地域では、サステナビリティという名を冠すること自体、いまだ主流とはほど遠い状態です。関心は高まりつつありますが、大多数が何もしない中で、不完全な取り組みが幅を利かせているという状況です。先進的なアセット・オーナーはこのことに気付いており、単なる責任投資原則(PRI)の順守を超えた、より進歩的なアプローチについて質問することで、最高水準のサステナブル投資の実践状況を見極めています。

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