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クレジット・アウトルック:過熱気味の経済運営

クレジット・アウトルック:過熱気味の経済運営

06-04-2021 | 四半期アウトルック
クレジット市場が堅調さを維持する可能性もありますが、失敗の余地は極めて限定的です。したがって、保守的なスタンスに付随する機会コストは大きくありません。
  • Sander  Bus
    Sander
    Bus
    Co-head Credit team
  • Victor  Verberk
    Victor
    Verberk
    CIO Fixed Income and Sustainability

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市場は景気回復シナリオを織り込み済み

ロベコの見解では、投資とは定点を予測することではなく、さまざまなシナリオの発生確率を推計した上で、市場の織り込み度合いを把握する作業を伴うものです。この点は、今回の四半期アウトルックとも密接に関連します。ロベコの見通しも、堅調な経済成長というコンセンサス予想と一致しますが、このような環境下でクレジット・ロングのポジションが常に正当化されるとは考えていません。

2021年に世界経済の成長率が、最近数十年間で最高の水準に達することは、確実なようです。極めて緩和的な金融政策、積極的な財政刺激策、経済活動の全面的な再開に伴う繰り延べ需要の顕在化といった要因が、成長率を一桁後半の水準に押し上げる見通しです。なかには、米国の名目GDP成長率が二桁に達するとの見方さえ存在しています。

FRBとECBはいずれも、低金利政策を長期間継続する意向を明確にしています。また、FRBは、市場の動きを意図的に後追いし、インフレ期待の高まりに起因する限りは債券利回りの上昇を容認する姿勢を示唆しています。

現在、前例のない財政、金融政策が採用されています。むしろ、二方面からの壮大な実験が行われていると主張することも可能ですが、実験には想定外の結果が常に付随します。

過去を振り返ると、クレジット市場のパフォーマンスは、景気後退局面の終了後1年あまりの間は良好に推移する傾向があります。さらに言うと、この20年間は、クレジット・スプレッドと金利の相関は概ねマイナスで推移してきました。それではなぜ、ロベコは保守的なポジショニングを推奨するのでしょうか。端的に言うと、市場には最良のシナリオが織り込まれているため、潜在的なテールリスクに見合うリターンを獲得できないからです。

クレジット市場が堅調さを維持する可能性もありますが、失敗の余地は極めて限定的です。したがって、保守的なスタンスに付随する機会コストは大きくありません。今後半年間にクレジット・リスクを積み増す好機が到来する公算は、非常に大きいと考えています。

テーパリングへの言及は近い可能性

第2四半期にワクチン接種が加速するとの見方を背景に、まずは米国、次いで英国と欧州において、経済活動が全面的に再開する見通しが顕著に強まっています。加えて、ベース効果の作用によって、GDP成長率は前年同期から大幅に上昇する見通しです。OECDは現在、先進国市場では今年の第4四半期までに、失われた経済成長の大部分が取り戻されると予想しています。また、最新の予測において、米国経済の成長軌道はコロナ前よりも上方にシフトするとしています。

今回のパンデミック危機の下で、想像を絶する規模の強力な財政政策が発動されましたが、おそらく、これで打ち止めではありません。米国では、新たなインフラ投資法案の作成作業が進んでいます。今回は、2020年に施行された2つの大規模な財政刺激プログラムに、追加される形となります。欧州における財政刺激策も、米国ほど突出した規模ではありませんが、あと1年は継続する見通しです。緊縮財政が景気回復の足かせとなった世界金融危機後の事例とは、今回の状況は大きく異なります。

ロベコでは、金利上昇に対する市場の警戒感は薄れていると考えています。名目金利が上昇しても、インフレも同時に上昇して実質利回りが低い水準にとどまる限りは、問題にはなりません。しかしながら、実質利回りが上昇傾向に転じた瞬間に、影響が生じ始めると予想されます。中央銀行は概して実質利回りの低位安定を望む、という見方には賛同しますが、中央銀行に完全な支配力があるわけではありません。米国経済が過熱方向に向かうなかで、FRBは第2四半期以降のいずれかの段階で、テーパリングの議論を始める公算が大きいようです。その結果、名目金利の上昇ないしはブレークイーブン・インフレ率の低下を通じて、実質利回りはさらに上昇する可能性があります。

総じて言えば、市場がファンダメンタルズの変化を先取りする動きについて懸念しています。金利のボラティリティ上昇、政策判断ミス、地政学的な緊張の高まりなど、ネガティブ・サプライズが想定外の形で重なれば、状況は悪化に転じる可能性があります。

失敗の余地がほとんど反映されていないバリュエーション

通常であれば、マクロ経済が改善する中で金融引き締め政策が講じられない環境は、リスク資産にとって追い風となりますが、そのような環境にあることは誰の目にも明らかであり、幅広く認識されています。また、クレジット市場は2020年に全面的な回復を遂げています。一般的な景気回復局面の初期段階においては、回復の持続性について懸念が残存するのが常であり、クレジット・スプレッドは現在よりもはるかに高い水準に位置しています。以前の「新芽(グリーン・シュート)」に関する議論が思い起こされます。今回の場合、成長鈍化の原因はパンデミックであり、甚大な規模の政策支援とワクチン接種による解決が予想されます。この点で幅広い合意が形成され、景気回復シナリオが実現前の段階から完全に織り込まれていることが、過去最悪の景気後退局面において市場が極めて堅調であったことの、背景要因となっています。

全般に、クレジット・スプレッドはコロナ前の水準か、それよりもタイトな水準まで回復しています。あらゆる分野において下位4分の1の水準を大幅に下回り、歴史的に最もタイトな水準に近づく動きさえ見受けられます。通常、経済成長率とインフレ率が低水準にとどまるような退屈な局面が、キャリー取引にとって最適な環境と考えられます。一方、景気後退局面は最悪な環境と言えます。また、アニマルスピリットの発動、リスクテイクの動き、積極的な財務レバレッジの引き上げ、過熱感を抑制するために政策や金利が極端に振れるリスクなどを考えると、 経済成長率が極めて高い局面も望ましくありません。

相対的な観点からは、クレジット市場には、金融セクターおよび新興国企業という2つの分野において、バリューが残されています。これらの分野でも、スプレッドは過去の中央値を下回りますが、他の分野ほど極端ではありません。また、保険会社と銀行にとって、インフレの上昇とイールドカーブのスティープニングが追い風になる可能性を踏まえると、金融はデュレーション・リスクが最も低いセクターと考えられます。新興国市場では、セクターと国の選別が引き続き重要であり、近い将来にリフレ状態となれば、コモディティ関連銘柄にはプラスに作用するものの、コモディティの輸入サイドにはマイナスに作用します。

総じてみると、第2四半期初めのバリュエーションの水準には不安感を覚えます。失敗の余地はほとんどありません。

慎重なポジショニング姿勢

クレジット市場にとって、2021年が退屈な1年になることも十分想定されます。派手な動きは国債とグロース株の市場に限定され、クレジット・スプレッドが足元のタイトなレンジ圏内での動きに終始する中で、キャリーのみが生み出されるといった展開です。

そうは言っても、ポジショニングにおいては慎重な姿勢が好ましいでしょう。クレジット市場では、「全てが青信号」という見方が幅広く共有されています。一部の「万年弱気筋」のセルサイド・アナリストも、強気なスタンスに転じています。とはいえ、すでに市場では、テールリスクに見合うリターンは確保できません。強気見通しがコンセンサスであるため、政策判断ミス、新型コロナウイルス対応の失敗、地政学的な緊張の高まりなどのネガティブ・サプライズに対して、市場は脆弱な状態にあります。

ベータに関しては、アンダーウエイトの方向に極端に傾けているわけではありません。投資ユニバースにおいて信用力の高い銘柄を重視しつつ、1を小幅に下回る水準に保っています。市場では銘柄間格差が非常に小さく、リスクの高い銘柄を選択するメリットは限定的です。このスタンスは、クレジット市場における全てのカテゴリーに共通します。

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