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SI Opener:コロナ後の時代におけるデジタル上の人権保護

SI Opener:コロナ後の時代におけるデジタル上の人権保護

03-06-2020 | SI Opener
デジタルデータは想像を超える勢いで拡大してきました。これに伴い、プライバシーと人権に深刻な問題が引き起こされる可能性が高まっています。慎重な取り扱いが求められる医療関連データを新型コロナ対策に利用する場合は特にそう言えます。世界のデータ量は、2020年には約40兆ギガバイトに達する見込みです。これは、地球上の全人口1人当たり5,000ギガバイト以上に相当します 1。すなわち、平均的なパソコンの容量の5倍です。そして、その多くは「あなた自身」に関するデータなのです。
  • Masja Zandbergen - Albers
    Masja
    Zandbergen - Albers
    Head of sustainability integration
  • Daniëlle Essink
    Daniëlle
    Essink
    Engagement Specialist

要点

  • 世界が新型コロナとの戦いを続ける中で、人権にとって試練の時が来ています。
  • デジタル上の権利を強化することが、実際のところ公衆衛生の向上につながると期待されます。
  • デジタル関連の課題を健全に管理できれば、企業にとって差別化要因となるでしょう。

ロベコは、サステナブル投資においては白黒の区別は明白ではなく、近道や安直な答えも存在しないと考えます。また、サステナビリティについて広く受け入れられた一般論の中には、実際には間違いもあると確信しています。そのため、ロベコは、サステナブル投資の分野をリードしてきた実績を活かして、正しい理解を促進していきたいという思いを強くしています。

「SI Openers」と題する新シリーズにおいては、サステナブル投資と人間の進歩に関連する問題を取り上げ、新しい気付きとなるような内容をお届けします。第1回では、デジタル化がプライバシーや人権にもたらす脅威を取り上げます。ロベコは、このシリーズを通じて、サステナブル投資が複雑であり、正しい投資判断のためには十分な専門知識と経験が必要であることへの理解を広めていきたいと考えています。

急速に発展するすべてのトレンドがそうであるように、適切な規制の枠組みの欠如は、関係する全ステークホルダーに新たなリスクと機会をもたらします。ロベコでは何年も前から、データプライバシーがインターネット企業や通信企業にとって、重大な事業リスクになり得るという認識を持っていました。実際、消費者データの収集、利用、販売を事業の中核に据えて構築されたビジネスモデルもあります。それに続き、サイバーセキュリティや人工知能(AI)の社会的リスクが、デジタル上の人権問題における注目すべき課題として浮上してきました。

新型コロナ対応がデジタル上の人権に試練をもたらす

新型コロナ危機により、他の多くの重要なESG問題と同様、デジタル上の人権にも試練の時が訪れています。感染者追跡アプリは、ある側面から見れば、生命を救って社会封鎖を解除することに役立ち、ひいては景気支援にもつながります。しかしながら、注意深く運用されなければ、人々のプライバシーが危険にさらされることになります。

今回の目的のためには、プライバシーも犠牲にすべきという議論を展開する人もいるかもしれません。一方で、同分野における有力な非営利団体であるAccessNowは、実際にはデジタル上の権利の強化こそが公衆衛生の向上に寄与すると主張しています2

ロベコは、この考え方を全面的に支持します。デジタル上の権利が適切に保護されていない場合、感染者追跡アプリが任意でデータ取り込みを求めても拒絶されるでしょう。その場合追跡アプリを成功させるには、取り込みの義務化が必要となりますが、多くの国では義務化は受け入れられず、結果として、政府はこうした保健衛生用デジタル・ツールの実用化に成功することができないでしょう。

デジタル上の権利をめぐる課題

さらに、それ以外に、そこまで明白に見えていない問題も存在します。医療関連データは、あらゆるデータの中でも最も慎重な取り扱いが求められる類のデータと言えましょう。そのデータ保護は最優先課題です。当局が急速な感染拡大に対応するためには、医療関連データの追跡が必要となるかもしれません。しかし、このデータの管理を間違えれば信頼の失墜につながり、保健衛生用デジタル・ツールの普及を妨げることになるでしょう。

関連するもう1つのテーマとして「監視」があります。各国政府は、問題視されがちな監視ツールを大規模に展開する口実として、この危機を利用するかもしれません。例えば、顔認識システムは、既に新型コロナウイルス感染拡大の中で人々の行動の観察、監視、制御を可能にする役割を果たしています。中国では、感染者の追跡や、マスク未着用者の特定に使用されています。

モスクワでは、ロシア当局が監視カメラ、顔認識システム、地理位置情報を利用して検疫隔離体制を強化し、感染者やその家族の追跡を行っていると伝えられています3。欧米諸国では、他の地域に比べ個人主義がより重視されていることは理解していますが、ロシアで行われているような慣行は、人々に明確な利益をもたらすことなしに、プライバシーに係る基本的な人権を著しく侵害するリスクがある、とロベコは考えます。

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検閲と虚偽情報

世界中の政府から情報通信(ICT)企業に対して、サービスへのアクセス制限やネットワーク遮断の指示が出されるケースが増加しています。こうした遮断が行われた結果、表現の自由という国際的に認められた権利が制限され、救命支援や支払い、保健サービスへのアクセスが妨げられ、家族や友人とのコンタクトが遮断される事態にもなりかねません。

場合によっては、こうした命令は人権侵害の追加的なリスクも生じさせます。例えば、選挙運動期間に情報の自由な流通を制限したり、遮断命令が特定の地域、地区、民族グループを対象としている場合などです。今回の危機では、中国、イラン、さらには米国の当局が、メディアや保健衛生当局によるソーシャルメディアを通じた情報共有を制御しようしていることが確認できました。

一方で、数多くの虚偽情報の公開も確認されています。息を止めるといった方法から、ありとあらゆる種類の薬まで、種々雑多な情報がパンデミック(感染爆発)の解決策としてもてはやされています。こうした問題への対応として、フェイスブック、グーグル、ツイッターなどの巨大プラットフォームは利用者に対し、保健衛生当局のような信頼できる情報源を積極的に活用するよう促しています。

企業にできることとは?

適切な規制の枠組みが存在しない中では、デジタル上の人権問題は投資先企業にとってリスクになりかねないと考えます。データプライバシー、サイバーセキュリティ、AIの社会的影響などの問題にさらされると、事業に大きな悪影響となる可能性があります。こうした課題を適切に管理することが、企業にとって差別化要因になり得ます。

そのため、ロベコのファンダメンタル運用プロセスでは、企業がこれらの課題をどのように管理しているかを体系的に分析しています。これらのリスクを評価するために、編集方針や情報セキュリティ方針の堅牢性だけでなく、違反や罰金といった事態におけるプロセスやその結果についても精査します。そのような事態における透明性が高い企業とそうでない企業も見極めます。

これらの分析を、その他の重要課題 - コーポレートガバナンスや人的資本管理など - の分析と掛け合わせることにより、当セクターの企業における企業価値の源泉への影響を評価します。データプライバシー、サイバーセキュリティや、AIの社会的リスクは、往々にして、収益要因やコスト要因という観点から定量化することが困難です。そこで、ロベコは、風評リスク、法的リスク、事業リスクの推定値の分析を基に、大抵の場合は企業の資本コストの数値に調整を施します。

氷山の一角

ロベコの投資分析やエンゲージメントの取り組みにおいては、差し迫ったリスクや課題に重点を置いています。例えば、差別やプライバシ-侵害につながるアルゴリズムバイアスなどです。また、デジタル上の人権に絡むコーポレートガバナンスの有効性、それが人的資本に及ぼす影響、そしてAIがもたらす機会などにも注目しています。これらはすべて、企業のビジネスにおける財務上重要な課題です。

ロベコは、企業に対し、取締役レベルにおいて知識を蓄積することや、デジタル化が加速する世界における人権を尊重する強固な方針とプロセスを実践することを求めています。また、問題や違反が発生した場合の透明性確保を求めます。もちろん、新型コロナの追跡、封じ込めに役立つアプリは良案です。一方で、その成功は人権保護が確立されているかどうかに掛かっているのです。

1 出所:https://techjury.net/stats-about/big-data-statistics/#gref
2 出所: https://www.accessnow.org/protect-digital-rights-promote-public-health-towards-a-better-coronavirus-response/
3 出所:AccessNow.org

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