低ボラティリティ投資は、批判的な視点と忍耐力をもって臨むことが不可欠

低ボラティリティ投資は、批判的な視点と忍耐力をもって臨むことが不可欠

28-06-2016 | インサイト

当コーナーでは定期的に、ロベコ社内の専門家による示唆に富んだ考察を取り上げています。今回は、低ボラティリティ商品を選定する際の注意点について考察します。

  • Peter van Kleef
    Peter
    van Kleef
    Chief Editor

要約:

  • 低ボラティリティ銘柄は、短期的には、市場全体よりもボラティリティが高まる可能性がある
  • 低ボラティリティ投資を行う投資家は、市場サイクルが最低でも一巡するまでの期間を、投資期間として想定するべき
  • より補強されたアプローチにより、金利上昇時の下支えが可能
  • 商品や運用会社選定の際に注意すべき5つのポイント

低ボラティリティ運用商品に対する関心が高まると、当然ながら提供される商品数も増加します。それに伴い、説明書きがほぼ同じ商品であっても中身は違うということも十分起こり得ます。

投資家は価格の大幅な変動を嫌います。それが一因となり、ボラティリティとリスクは同次元のものとして捉えられがちです。しかし、ボラティリティとリスクは同義語ではありません。投資家が抱える真のリスクとは最終的な損失を被る可能性のことであり、投資過程での一時的な変動のことではありません。

リスク回避的な投資家の多くは、株式投資におけるボラティリティ抑制のために低ボラティリティ商品への投資を考えます。金融危機以降、低ボラティリティ戦略へのニーズは高まり、同時に提供される商品数も増えました。低ボラティリティ戦略を選好するという判断は、大抵の場合リスクの観点からなされているようですが、これはリターンの観点からも効果的な戦略なのです。

低ボラティリティ戦略は、短期的には予想以上にボラティリティが高まることもあり得ますが、こうした戦略の低ボラティリティという特徴は、市場の下落局面や相対的に荒れた相場において最も効果を発揮します。また、過去のデータを見ると、低ボラティリティ銘柄のリターンは、市場全体のリターンをほぼ常に上回っています。唯一投資家に求められるのは、上げ相場と下げ相場の市場サイクルが一巡するまでを投資期間と設定することです。

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超過収益

1926~2010年のデータに基づいてロベコが行った調査では、パッシブの低ボラティリティ運用戦略が3年という期間において市場全体をアンダーパフォームする確率は、わずか10%であるとの結果が出ました。ロベコがコンサバティブ株式戦略において実践しているように、低ボラティリティ戦略に他のファクターを加味して補強すると、この確率はさらに大きく低下し2%となります。定量株式ポートフォリオ・マネージャーのPim van Vlietによると、コンサバティブ株式戦略が最初に設定された2006年以降のデータも、こうした調査結果と合致した内容となっています。

ロベコのコンサバティブ株式戦略は過去の低ボラティリティのみを考慮しているのではなく、モメンタムとバリューもファクターとしています。興味深いことに、長期間のデータを対象にこれら2つのファクターを加味して計算しても、リスク水準は純粋な低ボラティリティ戦略に比べて上昇しません。「しかも、2006年以降、このアプローチによるパフォーマンスは、純粋な低ボラティリティのアプローチを年率約2%上回っています。グローバル・コンサバティブ株式戦略は設定来、年率8%のリターンを上げています。これに対し、最小ボラティリティ指数のリターンが5.9%、全体市場は5.2%でした。」

「最小ボラティリティなどのパッシブのスマートベータ運用のリスクは、過去データのみを使用していることにあります」

Van Vlietによると、上記の結果は、2010年までの84年間について調査したデータとも一致しています。この結果の主な要因が、モメンタムとバリューというファクターの統合です。「最小ボラティリティなどのパッシブのスマートベータ運用のリスクは、過去データのみを使用していることにあります」とVan Vlietは述べています。

モデルを補強することの利点

「企業が財務的に困難な状況、すなわち経営難に陥る可能性を見極めるため、我々は企業のバランスシートも精査します。ある企業について、過去のボラティリティの高低に関わらず、借入資本でバランスシートが爆発寸前になっていたら、これによりボラティリティが急激に高まる可能性があります。モデルを補強することの2つ目の利点は、ポートフォリオの売買回転率を低く抑えられる点です。」

「一部の最小ボラティリティ商品の売買回転率は30%を大幅に上回っていますが、これでは取引コスト増加によるパフォーマンスの低下につながります。ロベコのグローバル・コンサバティブ株式戦略のポートフォリオの平均売買回転率は約25%であり、組入銘柄の平均保有期間は4年となっています。」

コンサバティブ株式戦略のもう1つの差別化要因は、地域別、国別およびセクター別配分について、指数からの乖離が10%を超過することを認めていない点にあります。これにより、機動的な運用の余地を確保しつつ、限られたセクターに突出したエクスポージャーを持つのを防ぐことができると、Van Vlietは指摘しています。「S&P低ボラティリティ指数は、長年にわたり、公益と生活必需品という2つのセクターだけに指数全体のほぼ60%が集中していました。こうした状況では、これら2つのセクターのパフォーマンスが悪化した場合、それに付随するあらゆるリスクから、ポートフォリオが大きな影響を受ける可能性があります。」

ボラティリティの大幅な低減

コンサバティブ株式戦略の構成銘柄はボラティリティの低さを基準に選択されますが、バリューとモメンタム、すなわち銘柄の割安度や投資家からの需要の高さも考慮されます。「2006年以降、一連の市場サイクルを通じ、コンサバティブ株式戦略は市場平均と比較して、平均で26%のボラティリティ低減を達成しました。リーマン・ブラザーズが経営破綻した2008年には、この数値は44%という最高値に達しています。市場のボラティリティが高まるほど、コンサバティブ株式戦略はボラティリティの抑制に成功しています。」

相場の上昇局面において、低ボラティリティ投資におけるボラティリティは、特に短期では市場全体よりも高くなる場合があります。これは、金融規制当局も注視しています。オランダの金融規制当局である金融市場庁(AFM)は先頃、投資家に対し、多くの運用商品のボラティリティが商品名が示唆する以上に高いことについて警告を出しました。

規制当局の懸念

欧州の規制当局である欧州証券市場監督局(ESMA)もこの件について調査しています。AFMはこれに該当する例としてパッシブの低ボラティリティ商品を取り上げ、これらの商品の売り手と、投資家への情報提供についての対話を持ちました。ここでは、投資家に対して、ボラティリティの測定方法についてどのように説明するかが焦点となりました。

こうした状況はVan Vlietにとっては見慣れた光景であり、次のように述べています。「下落局面において市場平均よりも損失を抑えることが低ボラティリティ戦略の核心といえますが、同時に、潮目が変わった時に大きく出遅れるのを避けることも重要です。これにより、上げ相場と下げ相場を含む市場サイクルを通じて、全体市場と同等もしくはそれを上回るリターンが達成可能となります。」

「長期で見れば、通常、低ボラティリティ戦略にはボラティリティ低減効果が明確に表れています。市場サイクルが一巡するまでの期間で比較した場合、市場平均に対するコンサバティブ株式戦略の優位性は非常に明白です。」

金利上昇を懸念?

グローバル・コンサバティブ株式戦略を設定(2006年)来の期間で見ると、ボラティリティの低減効果が明らかに見て取れます。しかしながら、同期間中、金利は一貫して低下傾向にありました。長期にわたる金利上昇局面では、これまでとは違う投資環境となるのでしょうか? Van Vlietは、低ボラティリティ戦略が金利上昇に敏感である可能性も認識しています。補強したモデルによるアプローチは、そうした市場環境においても力を発揮するのです。

Van Vlietは次のように見ています。「パッシブの低ボラティリティ運用は特に金利感応度が高いといえます。バリューとモメンタムというファクターを加味することで一定程度これを中和することが可能であり、当戦略の金利感応度は低減されます。」

低ボラティリティ商品選択のためのチェックリスト

商品へのニーズは多様であり、また提供される商品数も急増しているため、投資家の皆様からは、低ボラティリティ商品を選択する際の注意事項についての質問をよく耳にします。Van Vlietは以下の5項目を挙げています。

  • 多角的観点からリスクを考慮 過去の低ボラティリティのみを重視するのではなく、将来のリスクについても考慮すべき。この課題に対処するには、アクティブな低ボラティリティ運用を用いる方が効果的である。
  • 上昇局面におけるパフォーマンス 下落局面における損失抑制を目指すあまり、市場が再び好転した局面における上昇機会を過度に犠牲にしてはならない。
  • 売買回転率 ポートフォリオの売買回転率を低水準に抑えれば、取引コストの削減、リターンの向上につながる。
  • 集中リスク 過去のボラティリティのみを基準に銘柄選択を行うと、例えばセクター別では、非常にバランスの悪い配分比率となってしまう可能性がある。
  • 全てのポジションについて説明可能か? ポートフォリオの全ポジションについて、各銘柄の低ボラティリティの特性を根拠とした説明が可能か?

最後の項目は当然のことのように思われますが、実際は全く当然のことにはなっていないのが現状です。低ボラティリティ商品の運用会社の多くは、ポートフォリオ構築に「オプティマイザー」を使用しています。通常、オプティマイザーでは銘柄間の相関を精査します。銘柄Xが銘柄Yと低相関であるという理由から銘柄Xを組み入れれば、ポートフォリオ全体のボラティリティは低減できるかもしれません。しかし、単体ではボラティリティが高い性質を持つ銘柄を組み入れる結果となる可能性があります。

Van Vlietは次のように述べています。「オプティマイザーを用いて構築した商品のパフォーマンスが必ずしも劣るわけではなく、そうした商品全てのボラティリティが自動的に高くなる訳ではありませんが、オプティマイザーが具体的に何をしているのか説明するのは困難です。これは一種のブラックボックスと言えるでしょう。さらに、銘柄間の相関性は長期的に一定ではなく、ポートフォリオの調整が必要となるため、結果として取引コストが上昇します。」

重要事項

当資料は情報提供を目的として、Robeco Institutional Asset Management B.V.が作成した英文資料、もしくはその英文資料をロベコ・ジャパン株式会社が翻訳したものです。資料中の個別の金融商品の売買の勧誘や推奨等を目的とするものではありません。記載された情報は十分信頼できるものであると考えておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり、今後予告なしに変更されることがあります。運用状況、市場動向、意見等は、過去の一時点あるいは過去の一定期間についてのものであり、過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、記載された投資方針・戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません。当資料は法律、税務、会計面での助言の提供を意図するものではありません。

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