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バリュエーションをどう評価するか

クレジット投資に関する9つの疑問点 | Q4

バリュエーションをどう評価するか

個々の社債について、過小評価されている(「割安」である)という確証をつかむのは重要なステップですが、それだけでは十分ではありません。割安な要因が、重大なリスクとなり得る根本的な問題に起因するものではなく、真の意味でバリュー投資の機会が存在することを確認するためにファンダメンタルズ分析を徹底することこそ、真の課題であり、またチャンスでもあるのです。それでは、現在のグローバル・クレジット市場において、ロベコはどこに価値を見出しているでしょうか。

市場のバリュエーションを理解する方法

クレジットのアクティブ運用会社として、ロベコは発行体のベンチマーク対比での相対価値に注目します。その際、発行体や個別セクターのクレジット・スプレッドをインデックスのスプレッドと比較することが、最適な方法になります。例えば、あるBBB格の社債のクレジット・スプレッドを、比較対象となるBBB格のインデックスの平均スプレッドと比較してみましょう。社債のスプレッドが、インデックスと比べて、あるいは当該社債の過去の水準と比べて、ワイドな水準で取引されているのであれば、潜在的な魅力を示すシグナルとなります。

以下の簡易化したバリュエーション比較表では、グローバル・クレジット市場においてどのセグメントが過小もしくは過大評価されているかを示すために、さまざまなセグメントのオプション調整後スプレッド(OAS)を提示しました1。OASはクレジット分析において、 債券の利回りをリスクフリーレートのリターンと比較するために使われる指標です。

各セグメントの割安感を確認するため、現在のスプレッド(2024年1月31日時点)を長期の中央値(2005年以降)と比較しました。ここでは、ボラティリティの急激な上昇や流動性の枯渇に起因するスプレッドの急激な拡大の影響を緩和するために、平均値より中央値を使用する方が適切であると判断しています。

比較の結果(比率)には、各セグメントが割安(1より大きい)であるか割高(1より小さい)であるかが明確に示されています。例えば、米ドル建て投資適格クレジットに注目すると、現在のスプレッド比率は0.72であり、長期的な水準よりも約30%割高な状況が見てとれます。

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出所: ロベコ、ブルームバーグ。2024年1月31日時点のクレジットのバリュエーション比較表。この表ではクレジット・スプレッドの定義を「同等年限のオプション調整後スプレッド(OAS、国債対比)」とし、該当する市場のインデックス・スプレッドをベースにしています。

これに対して、ユーロ建て銀行シニア債の場合、現在のスプレッド比率は1.25であり、このセグメントの平均スプレッドが、長期の中央値を26%上回る水準で取引されている状況が確認できます。ロベコは現在、このセグメントに投資妙味が存在すると判断して、クレジット戦略においてオーバーウェイトとしています。さらに、クレジットのファンダメンタルズという点でも、欧州の銀行を選好しています。一方、より広範なユーロ建て投資適格クレジットのスプレッド比率は1.01と、長期の中央値と同水準で取引されています。このセグメントには、金融債と事業債の両方が含まれます。注目すべき点として、前述のように金融債(ユーロ建ての銀行シニア債)のスプレッドに投資妙味が存在する一方で、ユーロ建て事業債のスプレッドはそれほど魅力的ではありません。このため、ユーロ建て投資適格クレジットのセグメントでは、金融債をオーバーウェイト、事業債をアンダーウェイトとしています。

要約すると、現時点で投資妙味が存在する、あるいは過度に割高であるセグメント、地域、セクターを見極めるために、上記のアプローチを、マクロに関するトップダウンの評価、企業のファンダメンタルズやテクニカル要因に対する評価と組み合わせながら活用します。クレジット市場に割高感が存在する場合でも、クレジットに対する需要の底堅さ、発行量の不足、緩和的な金融政策を背景に、割高な状態が長期化することもあります。このようなクレジット投資の複雑性は、クレジット市場において勝ち組を特定する際のアクティブ運用の重要性を浮き彫りにしています。

脚注
1ロベコは通常、グローバル・クレジット市場において多くのセグメントやセクターを分析しており、この比較表は網羅的ではありませんので、ご留意ください。