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気候変動リスクとポートフォリオの脱炭素化が中心的課題に

気候変動リスクとポートフォリオの脱炭素化が中心的課題に

22-01-2021 | インタビュー
保険会社は気候変動リスクに直接的にさらされています。また、バランスシートに与える影響について、規制当局からの監視が強まっています。このような状況において、多くの保険会社にとって、投資ポートフォリオの段階的な脱炭素化が最優先課題となっていますが、これは決して容易な作業ではありません。
  • Edward Collinge
    Edward
    Collinge
    Global Head of Insurance Strategy

要点

  • 保険会社にとって気候変動リスクと脱炭素化が最優先課題に
  • 気候変動リスクの評価とポートフォリオの脱炭素化は容易な作業ではない
  • アクティブ・マネジャーはこれらの課題に取り組む保険会社を支援できる

気候変動リスクの高まりが保険会社の経営アジェンダに登場してから長年経過しましたが、同業界において切迫感が強まったのはここ数ヵ月のようです。これはなぜでしょうか。

「その通りです。気候変動リスク、なかでもポートフォリオの脱炭素化が中心的課題になりました。保険会社はかなり以前からサステナブル投資に関心を示してきました。困難に直面した人々にダウンサイド・プロテクションを提供することが本業であるため、サステナビリティや社会的責任投資は運用哲学に合致するものです。しかし最近までは、必ずしも最優先課題ではありませんでした。」

「例えば、欧州において大きな注目を集めていたのは、規制改革でした。また、低利回り環境が続く中で、比較的利回りが高い資産クラスを模索することも大きな課題でした。2年ほど前に、欧州委員会が保険会社及び他の機関投資家に対して、サステナビリティの枠組みを整備する必要性を指摘したことを受けて、状況は根底から変わりました。」

「オランダ、北欧諸国、スイスなどの限られた国の保険会社だけがサステナビリティに取り組んでいた状況から、すべての保険会社が最優先課題に掲げる状況に変化したのです。少なくともこれが2020年年初の状況であり、その後、言うまでもなく、新型コロナウイルスが直撃することになります。」

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2020年の早い段階では、新型コロナウイルスの影響によって保険会社の中でサステナビリティへの優先順位が下がるのではないか、という懸念の声をたびたび耳にしました。実際、そのような状況なのでしょうか。

「新型コロナウイルスが経済や金融市場に与えた影響は、保険会社のバランスシートにも多大な影響を及ぼしましたが、サステナビリティにコミットする方針は揺らいでいません。それどころか、危機によって業界のコミットメントは強まったように見受けられます。保険会社にとって、サステナビリティはリターンの安定性の改善、ポートフォリオの分散、ダウンサイド・プロテクションの強化を意味するものです。」

「この間、政策当局は圧力を緩めていません。例えば、気候変動リスクの特定の側面に関連して、欧州委員会や日本政府による2050年までのカーボン・ニュートラル実現の公約など、数多くの重要な発表が行われました。これらの目標達成に寄与する効果的な方法として、保険会社を含む機関投資家に対し、カーボン・ニュートラルの実現を促すことが挙げられます。」

「規制関連では、EUの保険及び年金問題を担当する独立した諮問機関であるEIOPA(欧州保険・年金監督局)が、気候変動リスクが投資ポートフォリオに与える影響に関する諮問文書を公表しています。EIOPAは保険会社に対して、資本引当の対象として気候変動リスクを認識することを検討し始めるよう要請しています。」

脱炭素化に関心がない企業でさえ、配慮せざるをえなくなるでしょう。

「保険会社はサステナビリティと気候関連アクションに対するコミットメントを強めており、規制当局もその方向に誘導しています。これらの動きがすべて同時に進行しています。このため、脱炭素化に関心がない企業でさえ、配慮せざるをえなくなるでしょう。今後数年間に数兆ドル規模の資産が低 カーボン・フットプリントの方向に向かい始め、市場にも必然的に変動が生じるからです。」

そうは言っても、即座に移行を実現することはできないのではないでしょうか。

「その通りです。投資家は現在、移行へのコミットメントを公表したうえで、移行に向けたロードマップに取り組んでいます。プロセスは総じて段階的なものであり、ロベコが話を伺った保険会社のほとんどは、5年単位のステップを念頭に置いています。つまり現在は、2025年の目標と目標達成方法を策定している段階です。例えば、ポートフォリオにおけるカーボン・フットプリントを向こう5年間に20~25%削減するといった目標です。」

「保険会社の保有資産の約90%が債券関連であることを思い起こしてください。例えば、クレジットを積極的に売買すれば未実現損益が発生し、保険契約者に対する支払いにも潜在的な影響が及びます。このため、債券の償還に合わせフットプリントの小さい債券への投資に充当するといったように、調整作業は必然的に段階的なものとなるでしょう。」

「また、カーボン・ニュートラルを実現するには、投資対象が変化することも必要です。別の言い方をすると、投資対象となりうる企業も、自ら変わらなければならないということです。したがって、アクティブオーナーシップや、NZAOA(ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス-保有資産残高の合計が5兆米ドルを超える、世界の33の大手機関投資家が加盟)などのイニシアティブが極めて重要になると考えています。」

低炭素運用戦略を開発すること以外に、資産運用会社が貢献できる分野はあるのでしょうか。

「資産運用会社が貢献しうる1つの方法として、脱炭素化に向けた道筋(グライドパス)を保険会社に提供することが考えられます。その観点からは、ロベコが最近立ち上げた、EUパリ協定準拠型の気候グローバル債券戦略が興味深い選択肢となるでしょう。この戦略は、債券の分野では初の試みとなります。EUパリ協定準拠型戦略の最終目標となりうるだけでなく、極限まで突き詰めることによって、排出削減において競合企業を上回る見込みが高い企業を積極的に特定する投資プロセスを構築できるという事例を示すものです。」

「現時点では、保険会社にとっては、ある種の折衷案から始めることも選択肢になるでしょう。言い換えると、パリ協定準拠型運用に関するEUベンチマーク規制に完全に適合していなくとも、2050年までのポートフォリオの脱炭素化という最終目標への道筋を示唆するような戦略を採用するということです。」

他にも資産運用会社が保険会社を支援できる方法はあるのでしょうか。

「他の投資家との違いとして、保険会社は極めて厳格な規制環境下で営業しています。運用対象を決定する最大の要因は、規制要因と言えるでしょう。例えば、保険会社が債券運用に傾斜している理由として、資本コストの少なさと長期負債とのデュレーション・マッチが挙げられます。」

「ポートフォリオの脱炭素化は容易な作業ではありません。ポートフォリオに対する制約が多いほど、投資リターンに大きな影響を与えずに追加的な制約を加えることは、困難になります。ロベコの分析によると、債券ポートフォリオにおいて、期待リターンやリスク調整後リターンに大きな影響を与えることなく、カーボン・フットプリントを最大30~40%削減することは可能です。」

「一方、さまざまな資産運用会社を経由して、プライベート・アセットを含む多くの資産クラスの運用を行う保険会社の場合は特に、カーボン関連データの出所、データの意味合い、一貫性をもってデータを報告する方法について理解する必要があります。端的に言うと、ポートフォリオの脱炭素化に付随する実務プロセスの仕組みについて詳細な理解が不可欠ということです。」

「これは資産運用会社が支援する余地がある分野です。保険会社が投資リターンとフットプリント削減のトレードオフの最適化を図るためにポートフォリオの構築プロセスや分析方法を策定する際に、支援することが可能でしょう。脱炭素化は単純に除外するだけではなし得ません。重層的な問題であり、精緻な分析能力が求められます。」

つまり、資産運用サービスの枠組みを超えた支援の提供ということでしょうか。

「その通りです。サステナビリティ追求におけるパートナーになるということです。アクティブオーナーシップに関する支援、報告業務や商品設計の支援、場合によってはサステナビリティのアジェンダ策定の支援なども含まれる可能性があります。脱炭素化という目標や、それ以外の特定のサステナブル投資の目標を掲げる保険会社に対して、ロベコのような資産運用会社は支援を提供することが可能です。」

インパクト投資は資本市場の主流として表舞台に登場するようになりました。これは好ましい傾向と言えるでしょう。

「これまで投資家は、グリーンボンドや社会的責任ベンチャー・キャピタル(SRVC)などへの投資を通じて、この種のインパクトを生み出そうと試みてきました。しかし現在では、インパクト投資は資本市場の主流として表舞台に登場するようになりました。投資可能なグリーンボンドやSRVCの市場規模は比較的小さく、保険会社のポートフォリオに占める割合は低水準にとどまると見られるため、これは好ましい傾向と言えるでしょう。」

気候問題以外では、投資家はどのような分野に注目しているのでしょうか。

「保険会社のアジェンダとしては、ジェンダーの多様性、社会的不平等、資源不足、健康的な生活などのテーマが増えています。個別のトレンド・テーマ型運用戦略に対する需要の拡大と、関連付けることも可能でしょう。健康的な生活や持続可能な水資源といったトレンドを追求する運用戦略を、保険会社が投資対象とすべきでない理由はあるのでしょうか。これは比較的新しい兆候ですが、その勢いは増しています。」

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