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債券アウトルック:レンジ相場の再来

債券アウトルック:レンジ相場の再来

28-12-2020 | インサイト
市場参加者には、短期的な要因や経済的な要因に過度に注目する傾向がみられますが、幅広い視点で将来を見据える必要があるのかもしれません。2021年から2022年にかけて、市場ではワクチン以外の変動要因が出現することも十分想定されます。
  • James Stuttard
    James
    Stuttard
    Head of Global Macro team and Portfolio Manager, Robeco
  • Bob Stoutjesdijk
    Bob
    Stoutjesdijk
    Analyst
  • Michiel de Bruin
    Michiel
    de Bruin
    Portfolio Manager Global Macro Fixed Income

要点

  • ワクチン開発が進むなか市場ではユーフォリア(熱狂的陶酔感)とも言える楽観が蔓延
  • 債券市場のバリュエーションは多くのセクターにおいて2020年初頭と驚くほど近い水準まで戻る
  • 2021年は一方向でのリスクオン相場になるとは限らず、レンジ相場の再来も想定される

今年は異例の1年となりました。英国経済は約300年ぶりの大幅な縮小を経験し、多くの国では政府債務残高が第二次世界大戦後最大の伸びを記録し、原油のスポット価格は一時マイナスに転じ、クレジット市場では1929年を上回る速いペースで下落が進行しました。しかし、驚くべきことに、世界の多くの(総合)債券市場では、年初と同様の水準で12月を迎えることになりました。米国の投資適格債のスプレッドは、年初の水準から一時300bp拡大したものの、年初プラス6bpの水準まで縮小しています。また、スイスの10年国債利回りは年初マイナス4bp、日本の10年国債利回りは年初プラス4bpと、小幅な動きにとどまっています。アジア市場では、韓国と中国の10年債利回りは1年前とほぼ変わっていません。一方、スペイン国債の対ドイツ国債スプレッドはわずかな縮小にとどまり、ドイツ国債利回りについても1年2カ月前の水準に回帰しています。為替市場では、マレーシア・リンギット、英ポンド、チリ・ペソなど幅広い通貨のスポットレートが1年前とほぼ同様の水準に戻しています。これに対して、ロベコが1年前に予想、指摘したように、米国債市場ではイールドカーブのブル・スティープニングが大幅に進行しており、また、イタリア国債の対ドイツ国債スプレッドも顕著に縮小しています。とはいえ、他の多くの点においては、2020年は大規模なレンジ相場に終始しています。

ユーロの投資適格債の利回りは、10カ月前まではわずか0.30%でした。その後、債券市場において極めてアクティブなアセットアロケーションを実行することによって、二桁近いトータルリターンを確保することも可能でした。必ずしも困難なレンジ相場はそれほど悪いものではないかもしれません。

レンジ相場の再来

2021年についても、多くの点においてレンジ相場の再来が予想されます。来年1年間について今年のようなスプレッド変動を予想することは難しく、おそらく非現実的と言えるでしょう。とはいえ、総じて小幅なレンジの動きに終始する見通しを踏まえると、例えば、米国の2年国債利回りが現在とほぼ同様の水準に落ち着いたとしても、意外なことではありません(他の先進国の2年国債利回りについても当てはまります)。一方、超長期ゾーンに注目すると、日本の30年国債のカーブはほぼ横ばいにとどまるとみられます。現在のワクチン開発を巡るユーフォリアが後退した後に、感染拡大前の時期に幅広く支持を集めていた「日本化」という長期的傾向を思い起こしてみると、その可能性も否定できません。投資適格債のスプレッドについても、現時点では想定外のショックに起因して大きく拡大しない限り、2021年末の水準は現在の水準と大きくは変わらない見通しです。

レンジを抜けるか

米国の30年国債利回りでさえも、ここ数週間は上昇圧力を受けているものの、2021年末の水準は現在とそれほど変わらないかもしれません。別の言い方をすると、1.5%から2.0%のレンジで推移する30年国債利回りには、上昇シナリオ以外は想定できないとの見方が大勢を占めるものの、両方向のリスクが明確に存在しています。昨年の同時期に限らず、2010年以降の10年間の年初予想においては、同様の見方が概ねコンセンサスだったことを指摘しておきたいと思います。ロベコでは、2021年に経済活動がようやく再開するとの見通しを前向きに捉える一方で、債券利回りは一方向にのみ動くとのコンセンサスは大胆すぎる可能性があると考えています。経験上、物事はそれほど単純には運びません。いずれにしても、利回りの上昇が2021年のテーマになるのであれば、セクターによって非対称的な投資機会が増える可能性があると考えられます。反対に、弱気見通し(金利上昇見通し)が実現しなかったとしても、決して初めてのことではありません。その場合、レンジ相場の再来というテーマから逸脱する市場を見極めることが、重要になります。

多くの国ではイールドカーブの中期ゾーンに割高感が存在しており、米国債英国債ドイツ国債のイールドカーブの短期ゾーンにおけるアウトライトのショートか、少なくとも2年/5年のスティープナーのポジションに合理性があるとみています。金利以外の市場を見渡すと、クレジット市場において想定外の動きが生じるとすれば、現在の総じて強気な見通しとバリュエーションの非対称性が強まる傾向に鑑み、下落方向の動きが中心になるでしょう。ワクチン開発に関する楽観が広がるなかで、これは異端な見方とも思われます。現在の市場のコンセンサスはそれほどまでに頑強なものですが、その事実こそが、波乱が生じる可能性や、コンセンサスが崩れる可能性を押し上げています。

債券市場は景気サイクルのみに依存しない

先入観を持たずに、2021年が一方向でのリスクオン相場になるかどうかを考える際に、以下の5つのポイントを念頭に置くべきでしょう。

  1. 米国では、スペイン風邪のパンデミックが終息した1920年春以降も、経済が二番底に入ったことを受けて、景気後退局面が1年3カ月間にわたって続きました。この間、クレジット・スプレッドは現在の2倍を超える水準で推移しています。

  2. 米国において、バイデン新政権の政策の柱である法人税増税が前回施行されたのは、70年前にさかのぼります。当時は、政府債務残高の一時的な急増に対応する措置でしたが、1950年当時の記憶はどの程度鮮明に残されているでしょうか。

  3. 春に暴落を経験した米国の株式市場は、8年連続で既往最高値を更新する形で2021年を迎えます。これは株式バブルに沸いた“狂騒の1920年代”の記録さえも上回るものです。

  4. 2020年より前から、所得格差は過去数十年間で最も深刻な状況にありましたが、パンデミックの影響でさらに深刻になりました。この先数年間に、どのような展開が想定されるのでしょうか。

  5. アラブの春、ギリシャ危機、ユーロ圏債務危機などの社会政治上の激動のイベントは、直近の大規模な世界的経済財政危機(世界金融危機)の数年後に発生しました。一方、1930年代の政治的、社会的な騒乱は、1929~32年のイベントに続くものでした。2020年のイベントが、この先数年間の社会、政治、地政学の有り様にいかなる点でも影響しないとしたら、それは意外なことと言えるでしょう。

市場参加者には、短期的な要因や経済的な要因に過度に注目する傾向がみられますが(そのため、長期的、政治的な変動要因がサプライズとなり、混乱が生じることも多いのですが)、幅広い視点で将来を見据える必要があるのかもしれません。2021年から2022年にかけて、市場ではワクチン以外の変動要因が出現することも十分想定されます。

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